Concept

思考を深く鍛え、「真理の探求」に努める

数学はあらゆる自然科学の基礎です。 森羅万象を数学で表現することにより、根源的な問題の解決が可能になります。 それは「真理の探求」に通じます。 数学科では純粋数学にとどまらず、自然、社会の諸現象を科学的に解明、 理論化するための高度な数理感覚を育みます。
Curriculum

カリキュラムの構成とポイント

  • 代数、幾何、解析、応用数学の4部門を中心として2-3年の基礎的な数学科目を構成
  • 3-4年では適正、興味にあわせた専門科目を選択履修
  • 応用数理学科とも密接に連携し、応用数理学科の科目も履修可能
  • 4年での少人数によるセミナー形式の授業
  • 数学(中学、高校)および情報(高校)の教職課程
  • 学部、大学院一貫教育も推進、大学院科目の学部での履修も可能
 小薗先生のご専門は「非線形微分方程式」ですが、どのようなものなのでしょうか?― そもそも、微分方程式の発想の起源は物理学にあります。
 実はニュートンの「運動の第二法則」、つまり、F=maで表される「運動方程式」が微分方程式なのです。”F”は物体に作用する力として知られていますが、具体的には、物体の運動状態が時間的にどう変化するかに現れます。ですから、”F”は、場所や時間の関数で示すことが可能です。この関数が示されれば、初期条件――場所と初速度を与えると、
“a ” について解くことによりt時間後にどこに移動するかを予測できます。ニュートンはこの「時間の2階微分方程式」を活用し、天体の動きなどを演繹的に導きました。
 現代でいえば、天気図がその典型例です。風力はベクトルの長さ、風向きはベクトルの向きに当たります。たとえば、南南東、風速10km/hという初期条件が与えられれば、t時間後の変化を予測できます。
 しかし、実際にはそんなに単純ではありません。地球の自転や熱などの様々な要因があるからです。考慮すべき要因が増えれば、単純な直線では示されないような複雑な動きをします。こうした動きを示した式を「非線形微分方程式」と呼びます。
「非線形微分方程式」は、具体的には空気や液体などの流体に活用されますが、実際の動きを予測し、計算するのは物理学や工学の専門家の仕事です。
 私たち数学科が扱うのは、より原理的な問題です。まず、そもそも解があるかどうか。解があるのならば、それをどうやって関数で示すのか。解の表示がなければ、近似値を求められるのか。こうした問題に取り組んでいます。
 解が決まらないこともあるのですね。

― これはショッキングなことで、たとえばガロア理論では、五次以上の代数方程式は解を決めることができないということがわかっています。代数方程式の解は、加減乗除の四則演算と√(根号)の組み合わせで係数によって表せる(これを根の公式と言います)かが問題になるのですが、四次まではできても、五次以上になると根の公式が存在しないのです。
「非線形微分方程式」でも、解が求まらないことは少なくありません。あるいは求まったとしても,直ぐに消滅したり無限大に発散してしまうことが数多く見受けられます.
 また、たとえ解があることが分かったとしても、即座に関数で表せるとは限りません。解があることと、関数で表すこととの間には、ギャップがあるのです。

「真理の探求」のために、思考を深く鍛える数学

  原理的な問題に取り組む数学科に求められるのは、どのような人材なのでしょうか?

― 数学科は、より根源的なことを考えることが好きな人、思考が好きな人に向いています。
 技能や資格試験のための勉強は、一分野の知識を増やすことしかできません。しかし数学によって思考力を鍛えると、人生全般を豊かにできます。思考力があれば、たとえ知らないことでも、それを学び、人に伝え理解させることができるようになるからです。
 数学科はスポーツなら陸上競技に例えることができるでしょう。陸上で、走る、跳ぶ、投げるという基本動作を鍛えていれば、他の競技に応用できます。たとえ100メートルを10秒切ることができなくても、そこそこ早く走れれば、他の競技で通用するでしょう。それと同じように、数学科であらゆる学問の基礎である思考力を鍛えていれば、どんな分野に行っても通用するのです。
 私たちがやっていることを格好良く言えば、「真理の探求」です。
 真理の探求が具体的に何の役に立つのかという人がいますが、必ず役立ちます。たとえば、情報工学で重要な暗号理論は、代数から発展しました。金融工学も微分方程式からできている部分があります。物理でいえば「物質の最小単位は何か」という根源的な問いから素粒子が導かれ、素粒子は原子力研究などに貢献しています。

思考の鍛え方が違うので、進路の心配は無用

 基礎学問だけに、就職を心配する学生もいるかもしれませんが。

― 実際、私もそうでした。友人に「数学科なんて行っても、教師になるのがオチ」と言われ、迷ったことがあります。
 しかし、こういっては失礼ですが、他の学問とは頭の鍛え方が違いますから、進路で心配することはありません。
 具体的には、情報・通信関連の企業から求められています。また、近年では保険業や金融業など、ファイナンス関連への就職も増えています。アクチュアリー*になる人も多いですね。

*アクチュアリーとは、将来のリスクや不確実性の分析・評価を行う専門職。「保険数理士」「保険数理人」とも。全科目合格まで平均8~9年とも言われる難関資格。
 最後に数学科を目指す受験生に一言を。

― 若い頃は、役に立つかどうかなどはあまり考えなくていいと思います。もちろん、人生を真面目に考えることは必要ですが、「人のために尽くそう」という気持ちさえあれば、たとえどんな学問を学んでいようと、花開く時が必ず訪れるからです。
 そのなかでも、思考を鍛えるのに最も適した学問は数学だと思います。根源的な問題を考えることに興味がある方は、是非、数学科で一緒に学びましょう。