研究の内容から教えて下さい。
― 現在、スマートフォンやクラウドサービスの普及で、通信量が爆発的に増大していますが、このままのペースで増え続けると、データセンターの処理能力や、消費電力から考えて、2020年頃に限界が来ると言われています。
そんななかで、僕は光ファイバー回線の経路の切り替え部分を効率化する研究に携わっています。
光は性質上、直進しかできません。光の進む方向を変えるためには、一度、光回線から電気に変換し、方向を変えて、再び光回線に戻すという作業が必要になります。この時に、通信速度は遅くなり、消費電力も増えるのです。だから、光回線のままで、経路の方向を変える研究が進められています。この分野を「光スイッチ」と呼びます。
どのような原理を使って、その研究に取り組んでいるのでしょうか。
― 今は、光の「全反射」という性質を使っています。
地上から水中にある物を見ると、実際の位置とは異なって見えますが、これは空気と水とで、光の屈折率が異なるためです。このとき、光は屈折と同時に反射も起こしているのですが、一定の角度になると、光が屈折せず、すべて反射することがあります。これが光の「全反射」という現象です。
光の屈折率は触媒に熱を加えたり、電流を流したりすることによって変えることができます。この原理を活用し、何とか光の進路を曲げられないかと試行錯誤しているところです。
この研究はこれからどう発展していきそうですか?
― 電気回路と光回線との融合へと進んでいくと思います。それぞれ電気は計算が得意で、光は通信の優位性があるという特性があります。その両者を活かして、チップとチップとを光回線で結ぶ回路ができれば、これまでよりもはるかに効率的な電子回路ができます。
この分野は「シリコンフォトニクス」と呼ばれていて、現在、注目を集めています。このチップとチップとを結ぶ部分に、僕が今研究している「光スイッチ」が活用されたらいいなと思っています。

受験勉強に打ち込むためには、自分なりの動機が大切

電子物理システム学科に進もうと思ったきっかけは?
― 僕が入った時の名称は「電子光システム学科」*だったのですが、「光」というからには光通信を扱うのだろうと思って志望しました。
僕がパソコンに興味を持ち始めた頃、ちょうどADSL回線が普及し始めて、通信速度が大幅に向上していました。ですから、自然と「もっと早くできたら」と興味を持ったのです。
処理能力の向上にも関心があって、プログラミング等を扱う「情報理工学科」と迷ったのですが、システム全般を支えるのは、やはり逓送であり、ものづくりだろうと考え、決断しました。
*「電子光システム学科」:「電子物理システム学科」の旧名称。2015年度より名称を変更した。
基幹理工学部は、二年生の頃に学科配属が決まりますね。
― 大学に入ってから、MIS.W(早稲田大学経営情報学会)というサークルに入って、プログラミング等を勉強していたので、学科配属の時は情報系の学科とかなり悩みましたね。*
でも、プログラミングは個人的にでも学べるけれど、通信・逓送などのものづくり携わるためには、大きな装置が必要です。それが本学科への進学の決め手になりました。
こうやって決められたのも、実際に入学してから自分の目で見たからこそであって、学科配属までに猶予があるのは非常に良いと思います。一年生の頃は皆で授業を受けるので、他学科の人と仲良くなれるというメリットもありますし。
※現在、電子物理システム学科が学系2に分類されており、2年進学時に、電子物理システム学科、応用数理学科、機械科学・航空学科、情報理工学科、情報通信学科から所属学科を選ぶ仕組みになっている。
最後に受験生にメッセージを。
― 良い大学に入るという動機よりも、自分なりに勉強する動機を持っていた方が、勉強に身が入ると思います。私はもとより、コンピュータなどの電子機械や通信に携わりたいと考えていたため、大学に入ることよりも、「今、勉強していることは、将来、必ず役に立つ」という確信を持って、勉強に取り組んでいました。極論ですが、受験に落ちたとしても、決して無駄ではないと思ってやっていました。
大学に向かって勉強する際、出来る限り自分の学力をあげて、その学力に合ったところを目指す方が多いかと思います。でも、その背景にある個人的な動機がないと、なかなか勉強に取り組めません。ただ、なんでその大学に入りたいのか、大学で何を勉強したいのか、その動機があれば勉強できるし、勉強を続ければ、やがて楽しくなるはずです。そうなれば、勝ったも同然です。
すから、勉強が楽しくなるまで、自分なりの動機を持って頑張って欲しいです。

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