2014.11.12

宇宙空間と航空機における機械材料(機械科学・航空学科)

機械と航空宇宙との関わり
「宇宙空間と機械」というと、スペースシャトルなどの宇宙機(宇宙往還機)やはやぶさなどの惑星探査機などを思い浮かべる人が多いかもしれません。もちろん、これらは宇宙で活躍する機械です。しかしながら、それだけが機械と宇宙との関わりではありません。宇宙空間は無重力であり、そのため地球上では見られない現象が起こります。それらを理解し応用していくことは「機械材料学」や「加工学」の分野では重要なことになります。また「航空機の開発要素」というと、翼の形、ジェットエンジンの仕組みなどがすぐ思いつきますが、航空機の歴史を見ると航空機に使われている材料も大きな役割を担っていることがわかります。今回は、宇宙の微小重力環境や航空機材料に関わる機械材料学、加工学の話題をいくつかご紹介したいと思います。
ISS(国際宇宙ステーション, International Space Station)での微小重力実験
若田光一宇宙飛行士が2014年3月に船長になるなど、現在ISSが話題になっており、インターネットで宇宙飛行士が宙に浮かびながら作業している姿を見ることができます。ISSの中は、重力が地上の100万分の1ほどと非常に小さい微小重力環境となっています。このような環境で、普段我々が地上で行っていることをすると、どのような現象が起こるでしょうか?雑巾を絞ったら?ろうそくの燃え方は?やかんのお湯の沸騰は?水に入れた角砂糖は?…など多くの疑問がわきあがります。これらの疑問に答えるのが力学、流体力学、熱力学を基礎とした機械科学です。すなわち、宇宙空間や微小重力環境で起きる現象は機械科学によって説明することができます。機械科学・航空学科の鈴木進補教授の研究室では、実際にISSを利用した実験を行っています。微小重力環境での実験結果を基に合金などの物質内で起こる現象のメカニズムを解明し、地上での溶解・凝固・結晶成長などの材料生産技術に応用しようとしています。
航空機に用いられている複合材料・超合金
ジュラルミン(高強度アルミニウム合金)の開発によって、機密度を高めた機体の製造が可能となり、上空10 kmを飛行するジェット旅客機が実現しました。上空の空気は0.2気圧程度で、機体の中を地上と同じ大気圧(1気圧)にしておくと、ガスボンベのように機体の外側に向かって大きな力がかかります。さらに、着陸するとこの力が取り除かれ、離着陸ごとに繰り返し力がかかったり、かからなくなったりすることが、金属疲労による機体損傷の原因となります。そのため機内の圧力を上空では0.8気圧程度(標高約2,000 mと同等)に下げる工夫をしていますが、これが機内で耳が痛くなったり、皮膚が乾燥したりする原因になっています。最近の新型旅客機は、炭素繊維で強化したプラスチックの複合材料(CFRP)で強い機体が作られているため、機内の圧力を下げなくても繰り返しかかる力に耐えられるようになり、空の旅を快適にしました。また、エンジンは燃焼室の温度が高いほど熱効率が向上しますが、それに耐える材料の開発が、実現の鍵を握っていました。最近では、超合金の発展により燃料の消費が少なく、環境にやさしいエンジンが使われています。このように材料の進化が航空機の進化に大きく貢献しています。
機械科学・航空学科が目指す教育と人材育成
このように、機械科学の一部である機械材料学や加工学の分野だけを取り上げても、宇宙空間から炭素繊維までさまざまなことが関わってきます。そのため、機械科学・航空学科では,自然科学と工学を融合した機械科学の基礎的な知識を幅広く修得し、それを積極的に活用することによって問題の発見とそれに対する解決能力を身につけることを教育の目標としています。その上で、機械科学の諸分野と航空宇宙工学に代表される総合的な理工学分野において、基礎及び応用最先端の研究や技術開発へ挑戦することによって、新たな科学的な価値の創造と技術革新に寄与できる技術者及び国際的に活躍できる真の人材を育成し、社会に貢献することを目的としています。

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