2016.02.01

自然と調和した機械・航空・宇宙のテクノロジーを求めて(機械科学・航空学科)

機械科学の過去と現在
「機械」と聞くと、多くの人は、私達の生活を便利で豊かにするために人間自身が作り出す夢の道具を想像することでしょう。実際、自動車や航空機、ロケットなどの技術の進歩によって私達の生活は飛躍的に向上し、便利になりました。しかし一方で、科学技術の進歩とともに、環境破壊や資源の枯渇など、人類の存在を脅かす問題が増えているのも事実です。遠い昔、大地がどこまでも平坦であると信じられていた時代には、多くの人が、環境や資源は無限に存在するかのような錯覚を抱き、人類が自然環境を変えてしまうなんていうことは思いもよらなかったことでしょう。しかし、産業革命以降の技術と社会の爆発的な成長により、自然環境は、人間の活動によって容易に破壊され消耗してしまうことが明らかになりました。私達人類の自然への作用は、いつか必ず私達自身に跳ね返ってくるのです。そして、利便性だけを追求して技術開発する時代は終わりを告げました。
自然に潜む未来型テクノロジーの種
21世紀の機械科学や航空宇宙技術を探求する私達にとって、自然および自然の中で進化を続けて来た人間自身に目を向ける必要性はますます高まってきています。実際、進化という観点から自然を注意深く眺めてみると、実は自然そのものが、計り知れない「エンジニア」であることに気付きます。例えば、生物の細胞の中では、分子モーターと呼ばれるタンパク質でできた多数の「機械」が正確に機能を発現し連携することによって、生命活動を支えています。また、地球上の生態系や大気、海洋の大循環系は、全てが調和的に相互作用することで、太陽を最大のエネルギー源とする一つの驚くべき動的システムを形成しています。さらに大きな世界に目を移すと、例えば太陽系の内部には、宇宙探査機が省エネルギーで旅する際に利用可能な、目に見えない多数の「チューブ」が張りめぐらされていることに気づきます。以上の例はどれも、何十億年という宇宙・地球・生命の進化の中で、自然そのものが自己組織的にデザインし創り上げてきた驚くべき産物です。さらに以上の例はどれも、部分が連携することによって全体として合目的的な機能を発現するという、広い意味での「機械」の性質を備えています。このように見てくると、自然そのものが、自然に最も調和したテクノロジーを生み出す最良の「エンジニア」であることが納得できるでしょう

生体内で機能を発現する回転型分子モーター(ATP合成酵素)

生体内で機能を発現する回転型分子モーター(ATP合成酵素)


Fig2

太陽系内の物質輸送を司る「チューブ」



私達の未来に向けて
自然が悠久の時の中で行う上述の「エンジニアリング」の秘訣を謙虚に学ぶことによってこそ、私達人類は、自然環境を維持するための新たな原理を備えた機械を生み出すことができるでしょう。さらに、人類がどこへ向かうべきなのかという究極の問題への答えもきっと見つけることができるでしょう。機械・航空・宇宙工学を土台にした「第二の地球を見出すための検討」や「新たな医学の創出」も少しずつではありますが始まっています。機械・航空・宇宙工学が、自然に恩返しすべき時、と言うべきなのかもしれません。では若い皆さんは、どのようにしたら自然から学ぶことができるのでしょうか?どのようにしたら「向かうべきところ」を見つけることができるのでしょうか?「万能な特効薬」はありませんが、一人一人が、早稲田大学のキャンパスの中で、いろいろな仲間・先輩・教員と議論し、そこを起点として世界を闊歩するところから何かが見えてくるのだと思います。

Fig3

新学期を迎えた西早稲田キャンパス

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