日本に留学したきっかけは何ですか。
ー 私はドイツのマンハイム大学を卒業した後、早稲田大学の国際コースに進学しました。ヨーロッパは日本のような新卒一括採用ではないので、就職のタイミングは比較的自由に選べます。私は海外で見聞を広め、それから就職しようと考え、日本に来ました。留学先は、高校時代にオーストラリアに留学したこともあって英語圏は選ばず、訪れたことのないアジアを検討していました。さまざまな国を検討したのですが、幼少期からアニメや漫画で親しみを感じていた日本に決めました。
当初の計画では3ヶ月ほど京都外国語大学の語学留学プログラムに通い、ドイツに戻る予定でした。日本での生活は予想以上に居心地がよく、気がついたら1年半経っていました。食事はもちろん、複雑な交通機関や独自の文化も驚くほど馴染めました。この頃にはすっかり日本びいきになっていましたね。自然と日本で大学院に進学することを考えるようになりました。
そこで目指すことにしたのが、早稲田大学でした。日本語の日常会話はある程度できるようになりましたが、研究を日本語でというのはまだ難しい。その点、早稲田の国際コースは英語での研究発表・論文執筆が課せられています。研究を進める上で最適だと感じ、進学を決意したのです。
研究について教えてください。
ー 確率論の研究をしています。これは株価計算や保険料の計算など、主にファイナンス分野の未来予測に用いられています。確率論はドイツにいた頃から研究していましたが、日常のあらゆる場面で活用できるところが好きで、ドイツ時代はポアソン過程について学びました。
ポアソン過程を使うことで、不測の事態を記述することができます。例えば工場のラインで製品を製造するとしましょう。このとき、一定の確率で不良品が発生します。この不良品=不測の事態を「ジャンプ」と表現しますが、このジャンプが起こる確率を求めることが、ポアソン過程によって可能になります。
現在、所属する清水研究室では、レヴィ過程を研究しています。レヴィ過程とは、ポアソン過程を一歩推し進めたもので、ジャンプに加えて分散を考慮します。これにより、同じ事象でも、レヴィ過程の方がポアソン過程よりも緻密に分析することが可能になります。
例えば、ある会社が倒産した時、株価は暴落します。この株価暴落は、実際は細かい値動きも伴っていますが、レヴィ過程においては大きな変動だけでなく株価の小さくランダムな変動も含めて値動きを観察します。
数学の面白さはどのようなところに感じますか。
ー 証明が美しくできると達成感を感じます。時には、何日間もかけて証明していくこともありますが、定義や定理を使いこなすのはもちろん、完璧な論理が求められますから、気が抜けません。ある種の「我慢」がいります。
そもそも数学を学ぶこと自体、我慢の連続です。同じ確率の分野でも、専門と少し違う分野になるだけで、ほとんど理解できないなんてこともあります。
わからないところからスタートして、少しずつ時間をかけて理解を積み重ねる。そういうところは、言語と似ています。
私はドイツ語・フランス語の二ヶ国語教育の中学校に通い、高校の留学で英語を、その後、日本語を身につけました。どの言語も学ぶ時には段階的に、忍耐強く学ぶ必要があります。文法と単語を頭に入れ、何度も話す練習を繰り返すことで会話できるようになるのですが、それまでは上手く伝えられないイライラを抱えながら我慢して勉強するしかありません。努力した先に喜びや達成感が待っているのは、数学も言語も同じです。そんなところが好きなのでしょう。
早稲田大学に留学を検討している方にメッセージを。
ー 英語学位プログラムは英語で学べますから、ぜひおすすめしたいですね。日本語を学びながら專門知識を深めたい人には学部入学がベストです。日本の大学では、授業や卒論が日本語しか対応していない大学もありますが、早稲田大学の英語学位プログラムなら授業でも卒論でも英語を使えますから安心です。
海外の大学に留学するには孤独や不安がつきものですが、早稲田には多くの留学生が在籍しているので心配いりません。私が学生スタッフリーダーを務める異文化交流センター(ICC)に来れば、各国の料理を楽しめる食事会やスポーツイベントを通じて日本人・外国人の両方の友人ができます。そういった機会を活用しながら、ぜひ、早稲田で最高の学生生活を満喫してください。

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