研究内容から教えて下さい。
― 研究分野は「代数幾何学」で、多項式で表される図形を研究しています。
たとえば、放物線は、y=x²という数式で表現でき、球面であれば、x²+y²+z²=1で表現することができます。これが多項式で表される図形です。純粋数学のなかでも、比較的イメージしやすい分野かもしれません。
その中でも、私が研究しているのは、高次元の図形の形や性質を研究しています。放物線は線ですから一次元、球面は面なので二次元になりますが、それ以上の次元の図形です。
三次元までは想像できますが、四次元以降は想像できません。
― そこが数学の面白いところで、数学は論理的であれば何をやってもかまいません。言い方を変えれば、とても自由なのです。たとえば、平面上では三角形の内角の和は180°ですが、180°より小さい世界も考えられます。
図形においても、四次元、五次元になると、具体的にどのようなものなのかは分かりません。けれども、数学の世界では、「そんな図形があったら、どんな形で、どんな性質なのだろうか」と考えてみてもいいわけです。
高校数学と大学数学との違いはどこにあると思いますか?
― 先ほどの高次元の図形の例ではないですが、高校までの数学は、具体化する方向で考えることが多かったと思うのですが、大学数学では抽象化する方向で考えるようになるかもしれません。
それから、大学で学ぶ数学はとても厳密だと思いますね。数学は正か誤かしかありません。正誤を突き詰めて、地に足の着いた研究を進めていくなかで、自然科学のあらゆる研究の土台となることが分かるのです。
ですから、数学の研究は普遍性があり、一度到達した真理が覆ることはありません。物理学の場合、ニュートン力学は宇宙規模になると通用しないことが分かり、相対性理論へと発展しましたが、このようなことは数学ではありえないのです。ですから、地球外に地球人と同程度の知性を持った知的生命体がいたら、言葉では通じないかもしれませんが、数学でなら対話できるかもしれません。

レベルが高い早稲田の「代数幾何」

研究の大変さはどこにあるのでしょうか。
― 数学は普遍性があるため、先人の考えたことを大きく超えなければ、新しい発見をすることはできません。書ける論文の数も必然的に少なくなります。だから、躓くこともあります。でも、そこを踏ん張って、粘り強く頑張れば、開けます。
私の知り合いでも、研究に行き詰まって、1年間大学に来られなくなった学生がいます。でも、踏み止まって課題に取り組み、打開することができ、修士課程で素晴らしい研究を成し遂げました。
研究室の雰囲気はいかがですか?
― 楫元先生の研究室に所属しているのですが、研究室を選択する時には、研究者としてどうなのかなどはもちろん判断できず、人柄の良さや授業の分かりやすさなど、教育者としての楫先生を尊敬していたから、志望しました。ですから、研究室も先生の人柄の良さが表れていて、皆仲良くやっています。
もちろん、研究レベルも申し分ありません。そもそも代数幾何学における日本のレベルは高く、フィールズ賞*受賞者の日本人3人はすべて代数幾何学の研究で受賞しています。そんな日本のなかでも、早稲田の代数幾何のレベルは高いのです。
研究室で週に一度開催されるセミナーでは、世界でもトップレベルで活躍する研究者――研究室所属の学生だけでなく、楫先生の知り合いや、研究室出身者たちが集い、皆で切磋琢磨しています。
*フィールズ賞:4年に一度開催される国際数学者会議で、顕著な業績を上げた40歳以下の若手の数学者に授与される賞。「数学のノーベル賞」と呼ばれることも。
最後に受験生に一言。
― 受験とはあまり関係ないかもしれませんが、若い人に伝えたいのは「興味のあることを早く見つけて欲しい」ということです。特に数学の場合、学ばなければならない先人たちの発見が多く、取り組むのに早いに越したことはありません。他の分野でもそうでしょう。
もちろん、そんなことを言っても、やりたいことを決められず、大学に入学する人もいるでしょう。そういう点を考えると、基幹理工学部が最初から学科配属を決めず、3つの学系ごとに受験できるのは意味があります。ですから、やりたいことが決まっている人も、決まっていない人も、オススメできる学部だと思いますね。

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