これから研究予定のテーマを教えてください。
ー 音楽ストリーミングサイトでは、ユーザーの再生履歴から曲を推薦する手法が用いられています。これを協調フィルタリングといいますが、再生履歴の似た他のユーザーのデータをもとに推薦されるので、時には趣向に合わない楽曲が推薦されてしまうこともあります。この推薦機能を改善し、個人の趣向により合ったものを推薦できるようにしたいと思っています。
この研究に用いるのは、ユーザーの脳波。私たちが楽曲を聴くとき、ジャンルはもちろん、リズム、声、音色といった多くの要素から、無意識に曲を判断しています。これらの要素のうち、どこに反応しているかは人によって異なります。その反応するポイントを知るために、ユーザーの脳波を測定することが有効と考えたのです。
脳波は通常、時系列で計測されますが、これを周波数(Hz)領域の系列に変換することで、特徴をとらえやすくします。(興奮状態では高い周波数の波の割合が多くなり、リラックス状態では低い周波数の波の割合が多くなると考えられています)。 この周波数に変換したデータを蓄積し、コンピュータに機械学習させることで、感情の高まる楽曲が推薦可能になります。簡単に言えば、これが研究の概要です。

脳波を解析することで、「好き」の感情を判断する

ー 先日、私が被験者となって、脳波を解析してもらいました。解析には、サポート・ベクター・マシン(SVM)という手法を用いました。SVMは機械学習モデルのひとつです。サポート・ベクターとは、データを分類するときに分類の基準となる要素のことで、脳波の解析を例に挙げれば、好きな楽曲グループと嫌いな楽曲グループの境界に位置するデータのことです。境界からサポート・ベクターまでの距離をマージンといいますが、このマージンの値が大きいほど、好きな楽曲グループとそうでないグループの境がはっきり分かれることになります。この境界をコンピュータに学習させることによって、新たな脳波データを取り込んだ際に、その曲が「好き」の側かそうでない側かを自動で判別するようになるのです。
また、別の手法としてスパースコーディングという手法も用いて解析しました。スパースは日本語で「まばら」という意味で、データから重要な要素だけを抽出することができる手法です。脳波解析では先に述べたSVMによる解析とこのスパースコーディングによる学習を行った上で、k-means法というクラスタリングによって分類するという解析の二種類を行いました。
残念ながら、解析結果では、チャンスレベルを超えますが、好きな曲と嫌いな曲の差がはっきりとわかるほどではありませんでした。詳しい原因は特定中ですが、手法の組み合わせの検討が必要かもしれません。研究は始まったばかりなので、さまざまな技術を試してベストな解析方法を見つけ出したいです。

なぜこの研究に携わろうと思ったのですか。
ー 高校生の頃に好きなバンドのライブに行ってからというもの、音楽の虜になってしまいました。さまざまな曲を聴くうちに、もっと好きな音楽が他にあるのではないかと自然と考えるようになりました。そこでストーリミングサービスや動画サイトで曲を探してみたのですが、思うような曲にはなかなか出会えませんでした。
残念なことに、人間が一生で聞くことのできる曲数は限られています。極端な話、「最高の1曲」に出会えないまま一生を終える可能性だってあります。もし、この研究を通じて、その人の趣向に最も合う楽曲がわかれば、私たちはそれぞれの「最高の1曲」を聴くことができるのです。
そんな私にとって、情報推薦の研究ができる亀山研究室との出会いは運命的でした。毎日が楽しくて仕方ないですね。

情報・通信分野に興味があれば、
自分に合った研究室がみつかるはず

印象に残る授業を教えてください。
ー 情報通信実験という授業で、ピースサインを画像認識させるシステムを作りました。大量の写真をコンピュータに読み込んで学習させることにより、ピースサインを認識するようになります。これを高度化し、スマホや監視カメラに応用したものが顔認識システムです。普段、何気なく使っている製品の高性能さに気づかされましたね。

受験生に情報通信学科の特徴を教えください。
ー 情報通信学科はメディアコンテンツ、セキュリティ、ネットワーク構築と幅広い分野をカバーしています。通信関係に興味があれば、自分に合った研究がみつかるはずです。
例えば、私の研究している情報推薦技術は至るところで使われている汎用性の高い技術ですが、他の研究室も最先端かつ、応用の幅の広い研究ができると思います。

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