Concept

機械科学を軸に様々な分野で活躍できる知識を学ぶ

地球環境、エネルギー問題を抱える現代社会においては、環境、エネルギー、情報、生命及び安全に関わる理工学の幅広い知識を体系的に理解し、その積極的な活用によって科学技術のより一層の洗練化と技術革新が希求されています。機械科学・航空学科では、自然科学と工学を融合した機械科学の基礎的な知識を幅広く修得し、新たな科学的な価値の創造と技術革新に寄与できる人材を育成し、社会に貢献することを目的としています。
Curriculum

カリキュラムの構成とポイント

  • 数学、物理学を基礎とする解析能力を充分に養い、応用面でも先進的なエンジニアを育成する。
  • 機械科学・航空学科における学問上の柱となる、材料力学、流体力学、熱力学、ダイナミクス、応用数学の5科目を必修科目として設置している。
  • 機械科学・航空実験や実習科目として製図や演習科目を重視する。
  • 機械工学の高度かつ先端分野として、物質、システム、環境、エネルギーから航空・宇宙までを網羅してます。
  • 数学や物理学を基礎とした科目間の有機的な繋がりを重視し、機械科学・航空に関連する学問を体系的かつ効果的に学習する。
 機械科学・航空学科の特徴を教えてください。

― 2007年の理工再編の際に、機械工学科から機械科学・航空学科として独立しました。航空という名前が学科名称に入っておりますが、システム、環境、エネルギー、材料、精密、マイクロ加工などの機械科学の分野だけでなく、航空分野、さらには宇宙工学まで見据えているからです。実は、早稲田大学には1944年に設立された「航空機学科」という名前の組織がありました。敗戦によって、僅か3年程度しか続かなかったのですが、航空の復活はそれに関わったOBや教員達の悲願でもありました。
 機械科学・航空学科は、力学系や航空宇宙など機械科学・航空への応用に重点を置いた物理工学系の中心的な学科です。特に、機械工学の基礎を学び、航空宇宙工学を応用的な先端分野と位置付けて、一つの学科の中で総合的な学問の習得ができるようになっております。機械科学・航空学科のある基幹理工学部の学系IIは、情報系、応用数理系、物理工学系の学科が設置されておりますが、本学科は、物理工学系の基礎となる伝統的な機械工学の分野だけでなく、生命科学や応用数学までも専門とする研究室があるので、基幹理工学部で最も幅広い分野を学ぶことができる学科であるといっても過言ではないでしょう。
 私の専門は、応用数学を基礎として、宇宙工学、数理物理、力学系などへ応用することを目指しています。受験生に私の専門を説明すると、機械科学 (英語では、”Applied Mechanics”) からイメージする学問分野と少し違うのでは?と思われるかもしれません。明治の啓蒙家、西周(にしあまね)が”Mechanics”の訳として「機械学」という言葉を作ったのですが、もちろん、”Mechanics”はマシンとしての機械ではなく、ガリレオやニュートン以来の「力学」を意味する言葉です。ガリレオやニュートンの時代は、「力学」は、今日で言う数学と物理の基となる、自然哲学の中心的な学問分野でした。今日、欧米では、数学的な手法を航空工学の基礎となるような流体力学や熱力学などへ応用する学問として”Applied Mathematics” (応用数学) という分野が確立されていますが、”Mechanics”を応用した学問である機械科学とは、まさにそのような学問を基礎にしており、それが私の専門分野となっております。

全く違うように見える現象が、統一的に理解できる

 

 先生のご専門をもう少し詳しく教えてください。
― 力学系の理論が専門です。具体的には、さまざまな物理現象や工学システムをモデル化し、微分方程式を用いて解析を行っています。対象としては、分子レベルのミクロな現象の解析から、流体、ロボット、宇宙機の軌道設計まで様々な物理現象を対象としています。
 二体問題というのをご存知でしょうか?例えば、宇宙空間では、地球と太陽など2つの惑星間に万有引力が働き互いに影響を及ぼし合っています。例えば、太陽と地球のような二体の運動はニュートンの運動方程式で表され、それらの運動は楕円、双曲線、放物線に分類できることが知られています。すなわち、数学モデルである微分方程式の初期値問題を解くことで、軌道を決定することが可能です。ところが、これにもう1つの天体を加えると三体問題となり、予測もできないような複雑な軌道が現れます。このような複雑な現象は今日カオスと呼ばれていますが、ポアンカレによって20世紀の初頭に見つけられました。実際に、カオスと呼ばれる現象をコンピュータによる数値計算で体現できるようになったのはごく最近のことです。宇宙工学の分野では、最近、「はやぶさ」のような深宇宙惑星探査機が注目されていますが、非常に多くの天体からの重力場のもとで、宇宙空間に帆を張って衛星を移動することにより、消費燃料を抑え、長時間の探査を可能にするような軌道の設計が注目されています。私の研究室では、太陽、地球、月、探査機からなる4体問題を解析力学で定式化し、チューブと呼ばれる不変多様体の性質を用いて、探査機の軌道をデザインします。
 流体に関する実験や理論研究も行っています。脳外科用のレーザー誘起ジェットメスというものがあり、レーザーによって高圧状態になった水が直径数ミリ程度のノズルから高速で噴射されると非常に小さな気泡(マイクロメートル)が多数発生します。その気泡のことをキャビテーションといいますが、個々の気泡は雲のように集団的な挙動をしますが、気泡雲がつぶれるときに20〜30気圧の非常に大きな衝撃波が発生します。また、個々の気泡がつぶれる速度は数マイクロ秒という非常に高速な現象です。このようなキャビテーションは、一般にスクリューやポンプなどの流体機械では羽根が破壊されてしまうことがあり、極めて厄介な現象として知られています。例えば、H2ロケットが墜落しましたが、これは燃料ポンプがキャビテーションによって破壊されたことが原因です。高速度カメラによる観測と実験によって、キャビテーション現象の数学モデルを提案し、気泡雲の圧壊と衝撃波の発生・伝搬の解明を行っています。
 宇宙機の軌道設計やキャビテーションのような、一見、全く違うようにみえることに共通のモデルや理論が使えるのが、力学系理論の研究の面白いところだと思っています。
 また、本学での数物系教員との連携はもとより、米国のカリフォルニア工科大学、フランスのエコール・ノルマル・シュペリュール、ドイツのマックス・プランク高等研究所などの世界の最先端の研究教育機関との国際的な共同研究をおこなっています。

深い理解の「感覚」をわかって欲しい

 学生に望むことは?

― 機械科学・航空学科に進学してくる学生は、多くの場合、航空や宇宙といった応用に興味を持って進学してきます。そういう具体的なことに興味を持っていることはとても大切なことですが、一方で、どんな分野でも、結局、数学や物理などの自然科学が基礎になってきます。奥深くまで研究を進めていくと、次第に、個々の基礎理論がどのように応用されているかが見えてきます。更に理解が深まると、数学や物理の理論で、日常的な現象を捉えられるようになり、「抽象的に世界を捉えること」の入り口に立つことができます。その深い理解の感覚を分かって欲しいという思いがあります。これが横断的に考えるということです。これによってひとつの知識が、かけ算的に広がっていきます。基幹理工学部は各学科の横のつながりを意識していますので、横断的に学ぶにはもってこいの環境です。
 是非、機械科学・航空学科で一緒に学びましょう。