Concept

未来社会を支える科学技術の研究と人材の育成

ナノサイズの世界から設計するデバイス、さまざまな機能を持つデバイスのシステム化、 電子と物理を主役としたテクノロジーは、汲みつくせない面白さを提供し、豊かな社会を支え続けます。 電子物理システム学科は、この基幹分野を担う次世代のプロを養成するため、ナノからマクロに至る各階層の学問領域を、少人数クラスできめ細かく教育します。
Curriculum

カリキュラムの構成とポイント

  • 電子と光のテクノロジーとそのシステム化に必要な学問領域をミクロからマクロな領域まで総合的に学習
  • 基礎物性、ナノテクノロジー、光通信、システム設計を中心に分類される多彩な科目群
  • 基礎から段階的にステップアップしながら、より専門性の高い先端的な学問領域へ
  • もの作りのセンスの体得、多角的視野と柔軟な思考能力の獲得を目的とした豊富な実験・演習科目を設置
 2015年度より、電子物理システム学科に名称を変更されましたが、その意図は?(旧名:電子光システム学科)
庄子: 今回の変更はあくまで名称変更で、教員が入れ替わるわけではありませんし、教育や研究内容が変わるわけでもありません。旧名の「電子光システム」という名称が、何を学べるのかイメージしにくいというご指摘をいただくことがあり、特にペアレンツ・デーでは、保護者の方から「どのような教育をする学科なのか」という質問を毎回受けていました。これが産業界をはじめとして、学科名称が対外的に与えている印象なのだ、と気づかされたのです。
本学科の使命は、日本の電子基幹産業に優秀な人材を輩出するということです。電子工学、光工学を産業の中核と考えて、「電子光」と銘打ったのですが、近年は電子工学の範疇に収まらない、物理的な機能システムを用いたデバイス開発も求められています。この状況に対応するために物理教育にも力を入れてきましたが、そのことをより直接的に表現できる名前にしようという意図があります。光工学の分野の重要度は以前と変わりませんが、物理がベースにあることを強調する方が、受験生にとって学科の全体像を感じ取ってもらいやすいと判断しました。

MEMSの技術で機械部品を小さくする

 庄子先生の専門について教えてください。
ー 電子工学と機械を融合させて、小さなデバイスを製作するMEMS(メムス:Micro Electro Mechanical Systems)という技術が専門です。私はもともと回路の研究室の出身で、集積回路の加工技術を応用して小さな機械を作る研究を25年程前に始め、マイクロメータースケールの小さな機械部品を製作することに成功しました。
機械部品というのはポンプやバルブのことで、これによってバイオや化学の分野の、いわば実験室を手のひらの上に乗るサイズで作ることが可能になります。具体的にはDNAやタンパク質、細胞をマイクロメータースケールの流路内で精密に操作し、複雑な化学反応を行う小さなデバイスを実現できます。また、酵素のような高価な試薬を分析する際に使用量が少なくて済むので、コストを大幅に抑えることができるうえ、反応も早いので実験に要する時間を大幅に節約できます。さらに実験の道具を多数集積化することで違う条件で一気に実験でき、効率的です。他にも大量の熱量が発生する化学実験も比較的安全に行うことが可能で、爆発を伴う実験も手軽に安全に行うことができるなど多くの利点があります。
 物理」が直接的にかかわるのはどんなところですか?
ー 例えば、先に述べたマイクロメータースケールの流路ではそこを流れる液体の流れが変化します。その物理的性質を理解した上で、機械素子や化学反応システムを効率的に設計する必要があります。
当学科が扱う分野ではカーボンナノチューブなどのようにナノスケールの構造体をデバイスとして使う機会が増えていますが、それらは物性を理解するだけでなく、その材料の特性も考慮する必要があります。また、これからの時代は有機材料を用いたデバイスの開発などが、日本が先進性を発揮できる分野ですから物理の幅広い知識が求められます。

 有機材料が付加価値をつけられるというのは?
ー  例えば、半導体の分野ではご存知のように中国、韓国にシェアを明け渡しています。しかし、ポリマー材料やカーボンナノチューブといった有機系の材料は自国で生産できないので日本から輸入しているのが現状です。それらの加工技術は日本に「一日の長」がありますし、なにより日本でものつくりをした方が早いでしょう。ここに生きる道があると思っています。ですから電子、物理、集積回路の知識をベースに、日本にしかできない新機能を持つデバイスを作っていかなければなりません。これは未知の領域ですから、研究の面白みを感じられる、わくわくする部分です。

大局観を持って

 受験生、高校生にメッセージを
ー 学生には「大局観を持て」といつも言っています。何か壁にぶつかった時に一歩引いて自分の置かれている状況を客観的に見られるようになって欲しい。そのためには幅広い知識を得ることが大事です。当学科では原子・分子からシステムまで幅広い分野を学べるので、間口を広く持って、それぞれの基礎をしっかり理解してから、更に興味のある分野に進んで欲しいですね。
日本社会は閉塞感に覆われているとよく言われます。限界が見えてしまって、衰退するばかりだと悲観している人も多いでしょう。しかし、私たちはデバイスを作ることを生業としているわけですから、扱っているもの自体が変わっていきますし、想像もつかない新しいものが必ず生まれます。そういった夢のあるデバイス、システムを開発するための基礎はやはり数学と物理です。それに加えて早稲田にはナノテクノロジー研究センターを始めとして、日本屈指の研究施設がそろっています。それらを活かしながらしっかりと勉強をして、世界を変えるんだという意欲をもって閉塞感を打ち破って欲しいですね。