研究の内容を
― 機械と人間の関係、そこから導き出されるデザインや機能はどういうものであるべきなのかということを考察しました。人工知能等の分野が発展していくと、近い将来、人間の仕事の多くを機械ができるようになるかもしれません。特に日本は超高齢化社会に突入し人口も減っていきますので、機械とコミュニケーションをとるシーンも増えてくるはずです。機械というのは、ロボットやコンピュータ、家電製品など様々なかたちのものを指しますが、それらのデザイン、また、利点に限らず負の側面も慎重に考えなくてはいけません。
D.A.ノーマンというアメリカの認知科学者は「機械中心ではなく人中心のデザインをせよ」と提唱しました。更に「機械を使う人間を賢くするもので、無能にするものであってはいけない」とも述べています。これらの考えに非常に感銘を受けました。
では具体的に人を賢くするものとはどういうものなのか。エモーショナル・デザインという著書のなかでは人の情動、すなわち嬉しい、楽しいなどの、機微を感じる部分に働きかけるデザインが大切だとして、以下の3点のポイントが挙げられています。

・ 魅力的で、見る者を楽しませるような見た目・外観であること。
・ そのものに対して良い思い出、記憶をもてること
・ ユーザビリティに考慮されているものであること

同じ時期にある企業との共同研究で「新しいマネキンのデザインする」というプロジェクトに参加しました。プロジェクトでは、マネキンの顔の部分にディスプレイを設置し、そこで情報表示をすることによって、人の情動に働きかけるようなものでした。この新しいマネキンは、コンセプトとして設置場所もアパレルの店内にとどまらず、駅構内の案内板の役割として、イベント会場等のアトラクションとしてなど、様々なシーンで用いられることが想定されました。その中で僕が手がけたマネキンは先程あげた三つのポイントを評価基準としてデザインしています。
人を賢くするデザインとはどういうものなのか、自分でも結論が出ていない部分もあるのですが、そういった問題意識を持って、便利だけに流されない、本質的な部分を見据える視点が必要なのだと思っています。今後も深めていきたいテーマです。

自分のやりたいことができる

表現工学科を選んだ理由は?
― 小さい頃から図工や絵を描くことが好きだったという単純な理由からなのですが、高校のころは早稲田大学に表現工学科という学科があると知ってからは、絶対にここに入り学びたいという気持ちで勉強していました。
入ってみると、面白い授業が多かったですね。芸術表現基礎という授業では画家の藪野先生が担当をされていて、映画をみたあとに様々な講評をされるのです。「人が何かを始めるのに遅すぎることはない」など、こころに残る言葉がたくさんありました。オルタナティブ映像制作という授業では早稲田の理工に語り継がれている、「51号館は傾いている」という都市伝説をテーマに、インタビューや調査を行い、短いドキュメンタリー映像作品を作ったのですが、そこから51号館は「傾いていない」という結論を得られました。受験生の皆さんもその点については心配しないで早稲田に来てください(笑)!

長 幾朗研究室はどんな雰囲気ですか?
― 長研究室を選んだのは、自分で研究テーマを設定できるところに惹かれたからです。ですから、研究室のメンバーの研究テーマもバラバラです。例えば、化粧に着目し、アイシャドウの色の変化でどういった効果が得られるのか研究した人もいましたし、広告をテーマに、便乗広告という問題についての研究をしている人もいれば、ウェアラブルコンピュータの試作品をつくった人もいました。
表現工学科を目指すような学生であれば、自分のやりたいことを研究できるのは魅力的な環境だと思います。

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