2017.06.03

マイクロ流体白色有機EL(電子物理システム学科 庄子 習一研究室)

有機ELは面発光や広視野角、フレキシブル性等の特徴を持つことからディスプレイや照明の幅を広げるものとして注目されている。2009年に九州大学で液体発光材料を発光層として用いた液体有機ELが初めて報告された。これにより、従来の固体有機ELでは難しかったクラックフリーなフレキシブルディスプレイの実現の道が開かれた。しかし、当初の液体有機ELは発光層となる液体有機半導体を透明電極付きの2枚のガラス基板間に導入する単純なものであった。そのため、ディスプレイで重要な異なる種類の発光層を集積化することが不可能で、またデバイス自体の屈曲ができないという課題があった。

我々の研究室では、以前からマイクロメータスケールの流路内の液体を制御し活用するマイクロフルィディクスエンジニアリング(マイクロ流体工学)の研究を続けてきた。早稲田大学ナノテクノロジー研究所にある設備を用い、Micro ElectroMechanical System(MEMS)技術およびナノテクノロジーを応用しデバイスの作製を行っている。従来のマイクロ流体工学では、主に化学・生化学および医療への応用を目的としたものであった。これまでに、我々は、短時間で分析が可能なMEMS液体クロマトグラフィチップやDNA、タンパクおよび細胞の操作・分析を行うマイクロ流体デバイス・システムを開発した。これらのマイクロ流体工学の基礎技術をもとに、5年ほど前から、光デバイスへの応用することを始めている。具体的には、異なる種類の液体有機半導体を流す流路を形成することで、発光層の集積化を可能としたマイクロ流体デバイス(マイクロ流体有機EL)を開発した。また、液体の流動性を活かした曲げに強いフレキシブルなマイクロ流体有機EL作製や、ピレン誘導体の液体有機半導体に微小量のゲスト固体有機発光材料を添加することによるオンデマンドなマルチカラー液体有機ELを開発してきた。

上述のマイクロ流体有機ELの成果を発展させて、複数の液体発光材料を微細マイクロ流路に導入し集積化マイクロ流体白色有機ELを提案した。MEMSプロセスと自己組織化膜を用いた異種材料接合技術によって幅が60 µm程のマイクロ流路をストライプ状に並べた構造を持つデバイスを作製した。

マイクロ流体白色有機ELデバイスの構造



その流路の上下にITO電極を形成して電極間距離を10 µm以下とした。この並列に配列されたマイクロ流路に交互に青緑色と黄色の発光材料を導入した。青緑色の液体発光材料はピレン誘導体の液体有機半導体PLQ(日産化学(株)製)を用い、黄色の液体発光材料はPLQを液体ホスト材料に固体ゲスト発光材料を添加したものを用いた。電圧印加により青緑色と黄色発光材料を同時に電界発光させることで、可視光領域を幅広くカバーする白色発光が可能となった。

マイクロ流体白色有機ELデバイスの発光特性



マイクロ流体白色有機ELは自在に形状が変形できる液体材料を用いることにより、従来の固体有機半導体薄膜を用いた有機ELデバイスとは異なる特徴を有する真のフレキシブルなディスプレイや照明への応用が可能である。また、発光層がマイクロ流路へ液体を注入するだけで形成可能であることから、オンデマンドな励起光源が作製可能である。これは、生化学や医療分野で待望されるポータブルバイオチップへの応用が期待される。

出典文献

N. Kobayashi, T. Kasahara, T. Edura, J. Oshima, R. Ishimatsu, M. Tsuwaki, T. Imato, S. Shoji, J. Mizuno, “Microfluidic White Organic Light-Emitting Diode Based on Integrated Patterns of Greenish-Blue and Yellow Solvent-Free Liquid Emitters”, Nature Publishing Group Scientific Reports, 5:14822 (2015)