2016.08.08

資源としての青函トンネルと電波(情報通信学科)

北海道新幹線が今年の3月に開業しました。子どもの頃から鉄道好きでしたので、北海道ゆかりのラベンダーやライラックを想わせる紫色の帯をまとった新幹線が青函トンネルを疾走する姿を見ると心が躍ります。また、それと同時に、青函トンネル内に敷設された3本の線路を目にすると、この鉄道ネットワークの進化が私の専門分野である「いつでも、どこでも」つながる通信ネットワークを実現する無線通信技術の進化と重なって見え、それらの間の類似性にちょっとした感動を覚えます。

今回、青函トンネルでは、長い年月と多大な労力のかかるトンネルを新たに建設することなく、在来線のレールの外側に新幹線用の線路をもう一本敷設して、レール幅の異なる在来線と新幹線の間のトンネル共用を実現しました。このアプローチは、まさに、無線通信の進化のアプローチと同じように見えます。無線通信でも、音声、データや画像は、限りある貴重な通信資源である電波によって伝送されますが、新しい通信システムを導入する場合、そのために新たに周波数を割り当てるのではなく、古い通信方式と新しい通信方式が互いに共存できるよう技術を高度化していきます。このように考えてみると、鉄道におけるトンネルは、無線通信における電波に対応していて、鉄道も無線通信も新旧のシステム共用といった、まさに共通のテーマに挑戦していることがわかります。

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この他、電波の有効活用といったテーマは、大都市におけるビルの高層化にもたとえることができます。超高層ビルは、土地を広げることなく、収容能力を劇的に向上させることができます。ビルの超高層化は、まさに年間約2倍、今後10年間で約1000倍のペースで増加すると見込まれるモバイルトラヒックの爆発的な増加に対処する上で鍵となるMIMO(multiple-input and multiple-output)技術と重なって見えます。MIMO技術は,送信側と受信側の両方で、複数のアンテナを持つことによって、使用する電波資源を増加させることなく、通信容量を向上させるものです。特にMIMO技術では,高層ビルにおいて各フロアを頑丈に仕切る設計技術が必要とされるのと同様に、受信側で同じ周波数を使って運ばれてきた信号を分離する、いわば10人の人が一度に喋ったことをすべて聞き分けられた聖徳太子の耳のような高度な信号処理技術が必要となります。現在、国内外で、あらゆるモノがインターネットを通じてつながるIoT(Internet of Things)を実現すべく、第5世代移動通信システムの研究開発が精力的に進められています。そこでは、アンテナを数100個設け、受信側では高度な信号分離技術を駆使した、1秒間に10ギガビットの伝送ができる無線通信技術の実現が期待されています。

このように、鉄道や建設をはじめとする他の分野において、情報通信分野と同様の目標やテーマを見出すことができることが大変興味深く、逆に、他の分野で行われている問題解決に向けたアプローチに違いが発見できると、それが自分野の問題解決のヒントになることがあります。

情報通信技術は、先進国にとっては、主に、超高齢化社会やエネルギー問題の解決の切り札として、新興国にとっては、主に、経済発展の基盤として、その高度化がより一層期待されています。情報通信学科では、90年にわたる早稲田理工通信の伝統を継承しつつ、高速・高信頼・高セキュリティーな情報ネットワークの基盤となる通信ネットワーク・コンピュータ技術と、ビッグデータと人工知能の連携により通信ネットワークにさらなる付加価値を与えるメディア・コンテンツ技術をバランスよく学びます。

日進月歩で進化する情報通信ネットワーク技術の上に、みなさんの興味・関心から生まれる新鮮かつ斬新なアイデアを重ね合わせて幸福で豊かなスマート社会を一緒に創り出していきませんか?

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