Concept

あらわす、つなげる、うみだす — 応用数理は未来への扉

自然科学の基礎となる数学を、基礎から最先端まで学び、
この世界で起こるあらゆる現象に潜む原理の解明に挑戦します。好奇心旺盛な姿勢で、さまざまな分野に数学で切り込んでいき
貢献できる人材を育成します。
Curriculum

カリキュラムの構成のポイント

  • 現象を数理解析する能力を養成
  • 基礎数学から現象・統計・情報などの応用へ発展
  • 理論だけでなく実験も重視
  • 3、4年次に科目履修の自由度
  • 数学科の科目も履修可能
 応用数理とは、どのような学問なのでしょうか?
― 一言で表せば、工学等で扱う実際の現象に応用することを考えて、数学を研究する学科です。研究のアプローチの方法は大きく二種類に分けられます。一つは、現実の現象を、数式など数学の言葉を使って記述するアプローチです。たとえば、交通渋滞という現象は、道路の形状、事故の影響、ドライバー心理など、様々な要因によって起こり、各分野の専門家がそれぞれの要因を掘り下げて研究しています。一方、私たちは個々の事情は専門家にお任せして、もう少し俯瞰して物事を見ます。交通渋滞の場合、クルマ1台を一つの粒子と考え、この粒子の動きを物理現象のようにとらえて数式に示し、専門家にフィードバックしたり、同じ法則に従う他の現象を探したりします。いわゆる「数理モデル」です。

もう一つは、現象から数学理論を発展させるアプローチです。たとえば、金融工学で微分方程式が使われたり,情報伝送で確率論が使われたりします。このように元々の数学で想定していない需要があると、新しい視点からその数学理論を進化させ、ときには新しい数学を創造することが起こります。

純粋数学よりも応用を意識していますから、物理、化学、生物などの知識も学びます。「実験」の授業も必修です。シャーレで化学反応を起こしたり、結晶成長を顕微鏡で観察したりして、現象の数理的法則を勉強します。

 扱う範囲が広そうですね。
― それも特徴のひとつです。応用数理には、ここからここまでが研究範囲だというものはありません。現象のすべてが研究対象になる可能性があります。応用数理という発想法は意外と古く、戦前の物理学者であり名文家でもあった寺田寅彦が身近な現象を数学的に考察していたり、寺田の弟子である中谷宇吉郎は雪の結晶を数理的にとらえたりしていました。博物学者である南方熊楠が研究した粘菌もその後数理的な研究が盛んです。

しかし、日本応用数理学会ですら発足後まだ25年程度で、古代ギリシャや古代中国に源をたどれる純粋数学と比べて、学問領域として認知されてから日が浅いと言えるでしょう。本学科の教員も、純粋数学出身の方もいますし、計算工学出身の方もいます。物理工学や金融工学の数理モデルを研究している教員もいて、分野は多岐にわたります。

方程式とデジタル数学をソリトンで結ぶ

 高橋先生は「ソリトン」と「デジタル数学」ご専門だと伺いましたが?
― ソリトンとは伝播していく波の形状や速度が変わらず、波同士が衝突してもそれぞれの波の形状が変わらず、安定して存在し続ける性質を持つ波動のことです。ソリトンは波が大きければ大きいほど伝播速度が速いなどの特徴があり、この動きを数式で示したものをソリトン方程式と呼びます。私はソリトンを研究し、「箱玉系」というモデルを考案しました。一列で無限に並べた箱にいくつかの玉を入れます。これを次の簡単なルールで変化させます。

1.左の箱から順に並べていく

2.箱に玉が入っていたらそれを取り出して右に運ぶ

3.手持ちの玉があって空箱に出会ったらひとつだけ入れる

以上の動作を何度も繰り返します。すると、孤立した玉は一箱ずつしか移動しないのですが、たくさん連なっている玉は大きく動きます。また、小さな連なりが大きな連なりに追い越されても、両者は連なりのまま残ることが分かります。これはソリトンの特徴そのものです。

箱玉系は、空箱を0、玉の入った箱を1と表せばデジタルで表現することが可能になります。そもそも0か1かの世界で示されるデジタルの世界は、ニュートン以来の微分方程式とは成り立ちが異なり、両者には互換性がありませんでした。

箱玉系を考案してからソリトン方程式とデジタルの世界とを結ぶことが私の課題となり、他の研究者と協力して、方程式とデジタルに互換性を持たせ、翻訳することに成功しました。

今はソリトンに限らず、他の現象でも、方程式からデジタル数学への翻訳ができないかを探っています。これをデジタル数学と呼んでいます。

常識にとらわれず、好奇心豊かに数学を活用

 これまでの常識をくつがえす発見ですね。
― 応用数理学科で全体的に言えるのは、常識にとらわれず、新しいことに興味を抱く人が多いという点です。数学が核になってはいるものの、応用も範疇にあるので学問としての純粋性にこだわる人は少ないと思います。ですから、学生もいろいろなことに興味を持っている好奇心旺盛な人、それから、発想力豊かな柔らかい頭を持った人に来てもらいたいですね。
 最後に、受験生にメッセージを。
― よく「数学が何の役に立つのか」「何のために数学を学ぶのか」と聞かれることがありますが、応用数理学科に来ればそれが分かります。数学という学問が好きでも、進路や就職が不安だという受験生もいるかもしれませんが、全くの誤解です。数学は物事の本質を見抜き、現象を描写する能力が身につく学問ですからどんな分野に行っても対応できるからです。

もし、大好きな数学で世の中の役に立ちたいと思うなら、世界を数学で知り、数学を世界に活用する応用数理学科を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

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