数学はあらゆる自然科学の基礎です。
森羅万象を数学で表現することにより、根源的な問題の解決が可能になります。
それは「真理の探求」に通じます。
数学科では純粋数学にとどまらず、自然、社会の諸現象を科学的に解明、理論化するための高度な数理感覚を育みます。
早稲田大学の数学科は1949年に創設された、歴史ある学科です。数学科では、代数,幾何,解析,応用数学の4部門を中心として教育、研究を行っています。
数学科は基幹理工学部に設置されている学科ですので、数学科に入って学びたいと考えている受験生の皆さんは、まず基幹理工学部の入学試験を受験することになります。
1年次には、理工学系共通科目および人文社会学系科目等を履修し、同時に数学,応用数理,情報科学などについての展望をもつことを目的とした共通科目群も履修します。2年進級時に数学科に配置されると、現代数学を理解するために必要な基礎科目を必修科目として履修し、どの分野にでも進めるよう基礎力を身につけます。3年次からは、学生の皆さんの適性・興味にあわせて専門科目を選択履修できます。3年次後半では、「数学特別演習」というプレゼミを取って研究室での勉強の仕方を体験することができます。4年次の初めに正式に研究室に配属され、「数学講究」で担当教員の指導のもと、少人数のセミナー形式を通して各研究分野をより専門的に学びます。数学科は応用数理学科と密接に連携しており、応用数理学科設置科目も履修することで、純粋数学と理工学諸分野とを融合する数理能力を身につけることができます。
数学は人類の歴史と共に歩んできた学問でして、他に類を見ない普遍性と幅広い適用性をもっています。実際、数学における理論は、ひとたび証明され検証されれば普遍的な理論となり、一度認められた理論がより新しい理論が出現することで後になって否定されるということは決して起こらない、最も信頼性が高い学問であると言えます。皆さんも新しい数学的真理を発見,証明,発表すれば、それは世界に認められ、伝えられます。
数学科では、先ほども述べましたように代数・幾何・解析・応用数学の4分野を柱として、単に技術の修得にとどまらず、物事の根源的な構造を見抜き、解析を行う数理的思考力を持つ学生を育てることを教育の目標としています。また、少人数教育を通して問題解決能力や総合判断力を磨きあげ、様々な科学分野や学問領域で活躍し、国際社会に貢献できる人材の育成を目指しています。
数学的思考力は、個人差はありますが数学科で学ぶ中で徐々に身についていきます。数学を考えることが好きな人、物事の根源的な構造に興味のある人は数学科に向いています。そういう人たちには、是非数学科に来てほしいですね。
私の専門は、確率論です。確率論の道具を使って、フラクタルや統計力学に現れる確率モデルなどの「複雑な図形」の上で、例えば熱がどのように伝わるかといった物理的な性質を理解するという研究をしています。具体的には、フラクタルなどの複雑な図形の上にランダムウォークやブラウン運動を作り、その性質を解明することで熱伝導の仕方などを解析しています。フラクタル図形には滑らかさがないために、微分にあたるものを単純に定義することはできませんが、確率論の手法は空間に滑らかさがなくても有効ですので、このような複雑な図形における物理現象を探るのに適しています。また、ランダムな粒子の動きを解析することで、対象となる抽象的な式の意味を視覚的・直感的に捉えることができることも、確率論を用いた研究の醍醐味です。実際にはこのテーマは、確率論をはじめ調和解析学、関数空間論、大域解析学、解析幾何学など幅広い研究分野と密接に関わっており、分野横断的な研究ができることも魅力の一つです。
複雑な図形においては、熱伝導は通常の空間(ユークリッド空間)の熱伝導とは異なる、異常拡散現象を起こします。この35年ほどの間に、異常拡散現象が起こる数学的メカニズムはかなり分かってきており、現在では、図形自体がランダムな、統計力学に現れるモデルへの応用も進んでいます。
実際の研究は、色々な方法でアプローチしてもうまくいかないことが多いですが、良い方法を見出して現象の背景にある数学的構造が見えた時の感動は何事にも代え難い素晴らしいものです。例えていうなら山登りのようなもので、汗をかきながら登った先ですごく綺麗な景色が見えて感動することがありますが、その時の感動と近いものがあります。
我々は、AIやビッグデータの解析などを通じた技術革新が急速に進む第四次産業革命の真っ只中にいますが、数学的思考はこのような技術革新の根幹をなすものであり、社会における需要も高まっています。数学的思考を身につけるには、自分自身で調べ、考え、深めるという自学自習の精神を身につけることが重要である一方、友達や先生との議論を通じて幅を広げることもとても大事です。
皆さんの中には、「数学を専攻して、将来は大丈夫かな?」という心配を持つ人もいるかもしれませんが、そのような心配は無用です。現象を根源的なところまで掘り下げて普遍的性質を考察する数学的思考は、これからの時代にますます必要とされるものです。数学に興味のある受験生や在校生の皆さん、是非、数学科で一緒に学びましょう。