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Department / Major

科学技術と芸術表現の融合による未来価値の創造

学科のコンセプト

尾形 哲也
(オガタ テツヤ)
教授/博士(工学)

早稲田大学表現工学科は、科学技術と芸術表現を融合させ、新たな社会ニーズへの対応と価値創造を目指す、2007年に設立された比較的新しい学科です。従来の理系や文系の枠を超え、独創的な表現活動を通して、社会課題の解決に貢献できる人材を育成しています。

カリキュラム構成のポイント

  • 多様な学問分野の融合:1, 2年次に、音響、音楽、映像、映画、人間工学、人工知能、ロボティクス、認知科学、哲学、メディアアートなど、幅広い分野の基礎を学びます。
  • 表現活動を通した実践力養成: 1, 2年次に、企画、制作、発表などの実践的な経験を積み、表現力と問題解決能力を養います。
  • 研究室での専門的な学習:3年次から研究室に所属し、専門的な学習を進め自身のバックグランドを固めます。
  • 多様な分野との連携: メディア、エンターテイメント、デザインなど、様々な分野の専門家と連携した研究活動を通して、幅広い視野と柔軟な思考力を身につけます。

Interview

学科・専攻の特色を教えてください。

工学でのシステムの評価は、エネルギー効率、加工精度、通信効率、認識率などの”数値”で測られることが一般的です。ここでスマートフォンについて考えてみましょう。スマートフォンはカメラとしてもゲーム機としても電話としても利用できますが、それぞれの”数値”性能は専用機に一つも及びません。しかし不十分ながら多様な機能が巧みなデザインと一体となることで、スマートフォンの市場価値は他の各専用機のすべて合わせたものの数倍になります。
表現工学科は、工学に加え、芸術表現や人文科学など、多様な研究分野との融合を通じて、”数値”的評価にとどまらない、新しい価値を創出し、社会に提供することを目指しています。

本学科・専攻が目指すものや求める人物像を教えていただけますでしょうか。

現在、深層学習とそれに続く生成AIの脅威的な発展により、これまでの科学技術の常識と社会の仕組みが変化し、責任あるAIの推進(AIアライアンス)の重要性が指摘されている状況にあります。このような背景で重要となるのが、自分の確固としたバックグラウンドに加えて、芸術表現や人文・社会科学系の知見に共感し協働できる”柔軟性”です。表現工学科はまさに、このような多様な知見を背景としつつ異分野を知り活動できる場です。是非、この環境を活かし、今後の多様性のある社会で、新しい技術をより高い視座から捉えられる人材として社会に貢献することを期待します。

先生のご専門について簡単にご紹介ください。

現在のAI(深層学習)の基盤となる人工神経回路モデルと人間型ロボットの融合研究を、早稲田大学での卒業研究の時から30以上年続けています。深層学習をロボット動作の学習に活用することにより、従来のロボティクスでは困難であった、柔軟物、粉体、粘性液体など多様な物体のハンドリングを実現し、一部は企業で製品化されました。またコミュニケーションロボットへの展開も行い、”物理世界で自ら人と触れ合うVtuber型ロボット”の開発なども行っています。しかしこれらの応用研究の背景には、人間の認知、学習、発達のメカニズムを、人間の”観察”ではなく、人工神経回路モデルとロボットなどを”構築”することで理解する基礎研究(構成論的研究)があります。この研究を30年続けていますが、人間を理解することは未だ先が全く見えない大問題です。しかし今までの経験から、この研究を続けていく過程で、深層学習のような今は想像もつかない新しい技術の創出につながっていくと考えています。

受験生(在学生)へのメッセージをお願いします。

試験は”数値”評価の典型です。上記したように本来、人間が考える”価値”のほとんどは”数値”では表せません。勉強したこと全てが役に立つこともないでしょう。しかし上記したように、自分のバックグラウンドを固めた後で、多様な知識を受け入れられる”柔軟性”は今後、特に重要になります。”自分とは今も未来も関係ない”と思える知識や価値に共感し取り組む、という柔軟性を育む一つの機会として受験をとらえることはできるのではないかと思います。皆さんが今、自分とは全く関係ないと思っているような、未知の面白いこと、世界で自分だけにできること、これを創り出せる環境が大学(特に研究室)にあります。皆さんと一緒に研究できるのを楽しみにしています。