表現工学科に出会ったのが、私にとって人生の分岐点でした。
大竹 媛子(おおたけ ひめこ)
表現工学科 学部3年
高校時代はどのように過ごされていましたか?
幼い頃から負けず嫌いで、猪突猛進な性格でした。ひとつのことに熱中すると時間を忘れて取り組み、他のことが疎かになることもよくありました。このような自分の思い描くビジョンを絶対に実現させたいという極端に尖った性格は高校生活で変わりました。長い通学時間や大量の課題によるストレスに加え、部活動やクラスでのトラブルに悩んだ経験から、私の中での「絶対こうしたい」「こうでなければいけない」という気持ちに諦めをつけられるようになったからです。それでも、決して優等生ではなかった私は、先生方や周囲の人たちの優しさに支えられ、自由に伸び伸びと過ごすことができました。根性と努力は失わずに、また、周囲を見ながら、時には戦略的に退くことの大切さも学びました。
また、他人の立場に立ち、一人一人の気持ちに寄り添うことを大切にしています。両親の都合で4年半米国に滞在した経験から、異なる文化や背景を持つ人々と交流していく中で、日米の「個人の意見の尊重の仕方」の違いを感じました。協調性を重んじる日本の教育とは対照的に、米国の教育は個性を伸ばします。その経験から、先入観を捨て、多様な視点から他者と向き合う姿勢が培われました。優等生ではないからこそ、固定概念にとらわれることなく、他者に寄り添うことができると信じています。
学部や学科を選んだ理由を教えてください。
幼い頃からものづくりに深い興味を持っており、理系でクリエイティブな分野を体系的に学ぶことに魅力を感じていました。早稲田大学の附属校での高校生活を通じて、特にデザインや美術に対しての魅力を再認識し、一時は大学推薦を辞退し、美大への進学を考えたこともありました。しかし、卒業論文を担当してくださった先生から表現工学科への進学を勧められたこと、そしてクリエイティブなアイデアを現実社会で実現する可能性に関心を抱き、工学と芸術を同時に学ぶことができる表現工学科に進む道を選びました。
学科において魅力的に感じている点を教えてください。
本学科の魅力は、大きく2つあります。
ひとつは、訪問講義と講師の方々の意識です。
表現工学科の授業には、多くの外部講師が訪れ、講義をしてくださります。例えば、ゲーム会社の社員、弁護士、プロの写真家、アーティスト、映画評論家などです。最前線で働いている方の話を聞くことで、将来のビジョンが明確になるだけでなく、学びへの興味も深まります。また、講義後は自由に話を聞きに行けるので、私もよく授業時間外にその分野を学習する上での悩みを相談したりしています。どなたも親切にアドバイスしてくれるので、自分でも気づかなかった新しい発見をすることが何度もあります。
次に、講師の方が生徒の個性に真摯に向き合ってくれることです。本学科の授業では発想力を問われる課題が多くだされます。どんな解答に対しても、その多くは学生の趣味に関するものであっても、実現可能性に関係なく真摯にアドバイスしてくださります。
表現工学科には、ゲーム開発をしている人や映画制作に打ち込んでいる人、合唱が好きな人など多彩な個性が集まっています。こうした多様性が、お互いを高め合える点も魅力の一つとなっています。
基幹の特徴である、進級振り分けについて、どのように感じましたか。
表現工学科を志望して入学したにもかかわらず、一年次の成績が芳しくなかったため、進振りは、大変心配していました。私は、春学期の間、課外活動に熱心に取り組んでいたため、学校の勉強が疎かになっていました。特に、基幹理工学部の一年次は通年の科目が多いため、秋学期に挽回することは難しかったです。唯一の救いは、私たちの年の表現工学科志望者が例年より少なかったことでした。
振り返ってみると、クラスによって成績取得の難易度がかなり異なるということです。偶数奇数によって難易度が変わるという都市伝説や、変わったあだ名がついているクラスもあります。ただ、楽なクラスよりも苦労するクラスの方が、生徒間の仲が良くなります。課題を通じての交流が絆を生み出し、学科配属後の交流にもつながっています。
学生生活の中で、学業以外に打ち込んでいることはありますか?
私は早稲田理工硬式庭球部の女子キャプテンをしています。元々理工体育会でしたが、現在では様々な目的を持った部員160名が集う大規模サークルとなっています。ビギナーの体験から経験者の育成まで、幅広い領域でテニスに関連する企画、管理、試合運営を担当してきました。特に、女子部員の実力向上とチーム意識の向上に貢献したいと思い、練習の目標設定とメニュー作成に力を入れました。部員一人一人に部の魅力を伝えるため、役職の業務以外でも、積極的に先輩後輩との親交を深め、リアルな声を聞くことで、同期間で意見が偏らないよう努めました。部員全員が全力で取り組むところが我が部の魅力です。毎年、新歓には300人ほどの理系学生が訪れ、新入生にとって良い交流の場となっております。入学したら、是非一度訪問してください。
また、アルバイトにも大変力を入れていました。塾講師、飲食業(ホールとキッチン)、家庭教師、インターンなど、多くの経験をしました。特に家庭教師では個人契約であったため、カリキュラムなしで学業面と精神面の両面からサポートを心がけました。長期インターンでは、インポートアクセサリーのPR、ブランディング、自社ブランドの新作の創案などを行っています。どのアルバイトでも全力で取り組むことができたのは、自分が必要とされていると実感できたからです。多くのアルバイト経験を通じて、自分に適した働き方や職種、そして組織の雰囲気を理解できたことも、非常に良い経験となりました。
今後の進路や目標、夢などについて教えてください。
志望業界と職種の関係で就活することを選びました。将来は、自分のアイデアで人に寄り添い、人同士を繋げることのできる人間になりたいです。これは、大学生時の硬式庭球部や家庭教師の経験により、人の価値観や感情に影響を与える環境のデザインへの興味が深くなったからです。
部活動ではキャプテンとして、女子の勝率向上に取り組む上で、異なる役職や学年の部員に意見を聞き、応援者を含めた部員全員が快適に感じる組織づくりに努めました。
家庭教師では、教科書や参考書の教え方とは違う体系的でわかりやすい解法の考え方と勉強への取り組み方を提案しました。
これらの経験を通じて、自分のアイデアによって直接感謝されることや、組織の一員として組織の活性化を感じることに、喜びを感じました。
幼い頃から取り組んできた、「0から1を生む」ものづくりに加え、部活動や家庭教師の経験で得た、「1から先を創造するデザイン」にも興味が深くなりました。
今後は、培ってきた芸術的感性と幅広いアウトプット方法を活用していきたいと思っています。一方で、ものづくりは自分の趣味程度に細く長く続けていければと思っています。
受験生へのメッセージをお願いします。
【後輩へ】
表現工学科は本当に良いところです。様々な爆発した個性が集まる場所です。今、自分のやりたいことを想像することができない人でも楽しめるプログラムがたくさんあります。大学院進学率や就職率にばかり目を奪われず、自分の正しいと思う道に進んでください。3年次が終わるまでに卒業単位(D群を除いた全ての単位)を全て取得しなければ卒業論文に着手できないことは注意してください。
【受験生へ】
受験期は長く辛いもので、自分の成長を感じられないことも多くあると思います。私自身、何度も挫折を経験しましたが、その経験を一度も後悔したことはありません。数年後に振り返ると、当時の経験の意味を理解し、感謝することができるからです。この経験から、自分の全力を出し切って達成できない結果ならば、それが自分にとっての最善だと考えるようになりました。どのような結果でも必ず報われる時が来るので、今は精一杯頑張ってください。
その他、何かあれば、お願いします。
①学系選択について
基幹理工学部において、学系選択は非常に重要です。事前調査を怠らず、自分にとって魅力的な学科を決めることが大切です。入学後は希望の学科に行けるように、勉強は頑張ってくださいね。
②美的センスの有無について
表現工学科には、個性的な生徒が多いのは事実ですが、アーティストだけが学ぶ学科ではありません。芸術だけが表現方法ではないからです。言葉、数字、科学、音楽、映像、写真、プログラミングなど、表現方法はそれぞれの人にとって様々な形をとります。自分にとってのアウトプット方法を模索することができるのはこの学科ならではの魅力です。
③学生生活について
一年次は年間で2コマしか学科の必修科目がありません。他は物理、数学、プログラミング、英語などの学部必修科目です。芸術表現を学びにきた生徒にとっては最初は辛いかもしれませんが、二年次からは選択授業が増え、幅広い授業コンセプトの中で一人一人が自分の興味に沿って楽しく学んでいます。
最後に
表現工学科に出会ったのが、私にとって人生の分岐点でした。本当にこの学科と学科の友人、講師の方々が大好きです。
受験生の皆さんも、有意義で納得のいく学生生活が送れるように、慎重に、そして将来に対する楽しさとワクワクも忘れずに学部学科選びをしてください。皆さんに会える日を楽しみにしています。