まるでホワイトボードに張り付いているかのように議論しあっています。
前田 隼佑(まえだ しゅんすけ)
数学応用数理専攻 博士1年
学部や研究室を選んだ理由を教えてください。
(学部を選んだ理由)私が高校生のときは、「AI」や「機械学習」という言葉が一人歩きをしていて、それらの技術を活用するために数学の知識が必要不可欠であることは、まだ世間では十分理解されていなかった印象です。当時父からの「これからの時代は、AIの時代で数学の知識が必要だ!」という言葉を頼りに、数学系の学系1に進学することを決めた覚えがあります。
(研究室を選んだ理由)また学部生時代には、数学の知識を使って社会にどのように貢献するかをぼんやり模索してみたりもしている時期でもありました。そのときに早水先生の「離散数学入門」(YouTubeで講義動画が公開)に出会いました。その講義では、数学のアイデアを直接的に自然現象をモデリングしている様子がわかりやすく紹介されており、非常に感銘を受けて早水研に行くことを決めました。
現在取り組んでいる研究について教えてください。
早水研では、グラフやネットワークに関する諸問題を扱う離散数学をメインに扱い、主に生物学的に重要な課題を見出して、数学の言葉で定式化し、その問題を解決する新しい定理やアルゴリズムを生み出すといった形で研究をしています。
私は主に「系統学」と呼ばれる学問をメインに扱っています。系統学とは生物種の進化の歴史や類縁関係を解明する学問であり、その生物種の進化の類縁関係や進化の系譜はよく「系統樹」というグラフ構造で描かれるのですが、植物の異種交雑や細菌の遺伝子水平伝播、ウイルスの遺伝子組み換えといった複雑なプロセスは、「系統樹」のような分岐構造のみで表現することが難しいです。そこで、系統樹を拡張した分岐のみならず合流をも表現できる「系統ネットワーク」を活用するデータ解析を行うための研究が重要になってきており、私はその「系統ネットワーク」を非類似度(距離データ)から作ったり、人間が理解しやすいようにするツールの開発に取り組んでいます。
研究室の魅力について教えてください。
私は早水研究室の雰囲気が好きですね。特に早水研では「Open Problem Camp」と呼ばれる、学生たちが自ら系統学などの未解決問題を持ち寄って問題解決に向けて議論し合う会が頻繁に開かれ、学部生から博士課程の学生までの全員が上下関係や知識の量など関係なく、まるでホワイトボードに張り付いているかのように議論しあっています。このように自主性を重じる研究室の雰囲気に魅力を感じます。
受験生や後輩へのメッセージをお願いします。
もしかしたら受験生の中で数学系にいくことを躊躇している人もいるかもしれません。たしかに、高校数学と大学数学はまったく違うといっても過言ではありません。しかしそのように悩んでいる人は、あえて積極的に大学数学にも触れてみてください。現在は、YouTubeやブログなどでも大学数学や数学に関する最先端の研究をわかりやすく発信しているコンテンツがたくさんあります。ぜひこのようなコンテンツを利用して、数学の面白さを感じてほしいです。