「情報通信学科」は次世代のコミュニケーション技術を創出します

人間はコミュニケーションの動物だとよく言われます。いくつかの動物種には人間の言葉に近いものが存在し、コミュニケーションをしていることが分かってきつつありますが、それでも、人間のように複雑なコミュニケーションをしている動物を私たちは他に知りません。詳しいことはよく分かっていませんが、多分、数十万年前にはある種の言語が既に存在し、音声によるコミュニケーションや、文字とは呼べなくとも、絵や記号によるコミュニケーションが存在していたのでしょう。ここで、絵や記号によるコミュニケーションは、その場に人がいなくとも内容を伝えられ、その情報を保存できるという意味で画期的な発明でした。その後、人間の生活が徐々に豊かになって行動範囲が広がると、遠隔地の人々との間でより複雑で正確なコミュニケーションが求められるようになったのは必然でした。そのため、数千年前には狼煙が発明され、数百キロ離れた人々と情報交換をしていたことが分かっています。その情報伝達スピードは時速百キロ以上だったということで、情報通信技術の起源はここにあったと言えるでしょう。
時代が下って18世紀末になると、腕木通信と呼ばれる情報通信技術が発明されました。これは、腕木と呼ばれる大きな可動式の3本の木の棒を組み上げて建物の上に設置し、その棒の組み合わせの形によって文字を表現し、遠方からそれを望遠鏡などで観測して読み取るというものでした。腕木を動かす機械技術と望遠鏡を実現する光学技術を組み合わせた、新しい情報通信技術でした。最盛期には、世界中に総延長1万4千キロにも及ぶネットワークが整備され、その情報伝送スピードは時速80キロ以上だったと言われています。ちなみに、腕木通信は当時「テレグラフ」と呼ばれ、今日、私たちはこの言葉を電報あるいは電信の意味で使っています。
19世紀になると、電気を使って情報を送る電信方式が発明されました。これ以降、情報通信に使われる道具はもっぱら電気になり、有線を使った電信と電話が発明され、ヘルツ、マックスウェル、マルコーニらによって電波が発見され利用する方法が発明されると、無線通信が始まりました。電気を使った有線通信と無線通信よって、情報通信はより大量の情報をより遠方に届ける手段を獲得しました。その後、20世紀の半ばにコンピュータが発明され、それを利用して情報を伝達したり処理する技術が発明されることによって情報通信技術は一層の飛躍を遂げ、21世紀の私たちの様々な社会活動を支える世界の技術基盤として、必要不可欠なものへと変貌しました。そして、現在、人々の間のコミュニケーションばかりではなく、機械と機械の間の情報交換も情報通信技術によって行われています。今日、皆さんが、コンピュータ、スマートフォン、タブレットPC、その他の様々な情報通信機器を使い、様々なコミュニケーションを日常的に行えるのは、先達によるこのような連綿たる情報通信技術の研究と発明があったからなのです。
ところで、私たちの身の回りにある現在の情報通信機器やネットワークは究極のコミュニケーションの道具で、これ以上の進化は必要ないのでしょうか。もちろん答えはNoです。より高速に大量でリッチな情報を受け取りたい、交換したいというのは、コミュニケーションの動物である人間の本質的な欲求であり、今の技術が完全でないことはいくらでも例を挙げて説明できます。社会の持続的な発展には、より高度で使いやすい情報通信技術が、いつの時代にも求められているのです。
私たち情報通信学科が目指すのは、まさにこの点、即ち、次世代の新しい情報通信技術の実現です。現在のインターネットに代わる新しいネットワーク、より高速で大容量の通信を実現する情報通信システム、そして、よりリッチでリアルなコミュニケーションを、安心、安全、確実に実現するための種々の画期的な情報通信技術及び情報処理技術を追求しています。そして、これらの革新的な研究を通して、より豊かで幸福な社会の実現に貢献して行きます。皆さんも私たちの仲間になって、次世代の新しいコミュニケーションを実現する技術を一緒に作っていきましょう。そして、新しい情報通信技術を人類のかけがえのない遺産として次の世代に伝える役割を一緒に担っていきませんか。