統計学の光と闇(応用数理学科)

今、最もセクシーな仕事
2009年。米国Google社のチーフ・エコノミストVarian氏の言葉がニューヨーク・タイムズ紙に掲載され話題になりました。
「今後10年間で最高にセクシーな職業は統計家(statisticians)である」
それから6年になりますが彼の先見は間違ってはいなかったでしょう。巷にはビッグデータという言葉があふれ、「統計学は最強の学問」などと謳われる今日この頃。統計家の需要は年々高まっているように見えます。
この統計学を理論からしっかり学べるのが応用数理学科です。今回は、統計学と数学の現実への応用について、興味深い事例を紹介したいと思います。
統計学にもたらされた光
統計学の目的は、データの散らばり(分布)の様子を数理的にモデル化し、そのモデルを使って将来を予測することです。例えば、過去の株価のデータから投資損益の分布の数理モデルを作り明日の収支を予想する、というのが典型的な例です。この分布の代表的なモデルが「正規分布」と呼ばれるものです。正規分布は、世界三大数学者としても知られるC.F.ガウスが天体の観測誤差の研究の中で定式化し、昔の10マルク紙幣にもその分布を表す関数が描かれていたほど有名な分布で(下部画像参照)、統計学のあらゆる場面で応用されます。その人気の秘密をざっくり言えば、データを“大量に”集めると“一定の条件の下”でそれが正規分布するという数学的事実にあります。この数学上の定理に支えられ「正規分布の仮定」は多くの簡便な統計的手法を生み出し、数学的な正当性をも与えてきました。まさに、正規分布は統計学に光をもたらしたと言ってよいでしょう。
実は投資理論の多くにもこの「正規分布の仮定」が使われていたりします。投資に興味のある人なら一度は耳にしたことがある(?)株価の“ブラック=ショールズ・モデル”でも株価収益率(≒株価の増減を直近の株価で割った値)に正規分布を仮定しています。そのおかげで美しい理論構築が可能になり、1997年にノーベル経済学賞を受賞します。一時は“正規分布万能主義”のような思想がはびこったその頃…そこに大きな落とし穴が待っていたのです。

gauss

「正規分布」が描かれた旧10マルク紙幣

正規分布に潜む闇?
2008年9月。アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻しました。いわゆる「リーマン・ショック」です。これが引き金となり世界経済は金融危機に陥ります。これには様々な要因がありましたが、その一つに投資損益に対する「正規分布の仮定」があったといわれています。金融市場における投資収益の変化は目まぐるしく“ばらつき”が大きいのですが、実は正規分布ではこのような大きな“ばらつき”をうまく予測できません。例えば、正規分布の仮定の下では200年に1度くらいしか起こらないはずの想定外の株価変動が、リーマン・ショックの前後で実に数十回の頻度で起こっていたと言われています。このため、ファイナンス理論を研究している数学者や統計学者たちに非難が向き、某国首相が「ファイナンスを教える数学の教授たちは自らが知らずして人道に反する罪を犯している」と発言。数学者たちが連名で新聞に反論記事を掲載するという事態にまでなりました。
数学者たちの反論は?
確かに、正規分布に基づく理論は美しい体系を作り汎用性の高いものでした。しかし、先述のように正規分布が使えるのは“一定の条件の下”であることに注意せねばなりません。数学者たちの反論はこうです。「我々は、市場において理論の前提条件が満たされない可能性に常に警笛を鳴らしてきた。それらの警告に耳を傾けなかったのは一体誰だったでしょう」
あまりにも魅力的な結論を与える数学上の結果を応用するとき、その結論だけが独り歩きして前提となる条件が無視されることがしばしば起こります。しかし、数学はすべて仮定の上に成り立っており、少しでも前提条件が崩れれば結果は全く違ってしまうかもしれないのです。
「リーマン・ショック」は、数学を実社会に応用する上での重要な教訓を我々に与えてくれました。数理モデルはあくまで現象に対する近似にすぎません。モデルがどのくらい現実を説明できるか、様々な角度からの実証によって慎重にそれを確認し、その上に数学の理論を積み上げていく必要があるのです。
ちなみに、冒頭のVarian氏の言葉はリーマン・ショックから1年後の記事です。彼の言葉は単なる統計ツールを操る統計家でなく、理論を背景に是非を論ずることのできる統計家の需要を示すものと理解すべきでしょう。我々は歴史に学ばねばなりません。皆さんも応用数理学科で正しい数学的知識と実践的精神を身に着け、自らの力で新しい未来への扉を開いてみませんか?

幾何学が与えてくれるもの(数学科)

幾何学とは図形や空間を扱う学問です。今回は、幾何学が我々に何をもたらしたのかを改めて考えてみましょう。
「ユークリッド幾何学」
中学校で扱う三角形の合同などは、ユークリッド幾何学という2000年以上前から知られている幾何学です。それが記されている「ユークリッド原論」では、「点とは部分をもたないものである」等の点、直線、円などの定義、そして、それらが満たすべき五つの公理のみから理論を構築しています。公理の一つは「平行線公理」と呼ばれ「直線L上にない点を通りLと交わらない(つまり平行な)直線が唯一本引ける」というものです。これを「公理」とすべきか他の四つの公理から導ける「定理」なのかという論争が続き、決着を見るには19世紀まで待たなければなりません・このユークリッド原論は、数学のみならず、すべての学問の根本にあるものを与えてくれます。「様々な経験的事実から、本質を見抜き、論理体系を作り上げる。また、証明を与え、理論を普遍的なものとする」。つまり、「学問とは何をするものか」に対する回答を与えているのです。
「座標を用いた幾何学」
次に、高校で学ぶ幾何は、平面や空間に「座標」を入れて幾何学を行う「解析幾何学」です。それまでコンパスと定規で扱ってきた図形は、座標を導入することで代数的または解析的に調べることが可能となり、複雑な曲線も扱えるようになります。例えば、以下の図1がそうです。

図1

17世紀後半にニュートンは力学を記述する際、この解析幾何学を明確な形で使い始めました。そして「微積分学」が発展するのです。座標という「空間の新しい捉え方」が科学に大いなる進歩をもたらしたのです。
「非ユークリッド幾何学の誕生」
さて、我々が住んでいる空間では、2点の距離を「2点を結ぶ最短曲線である線分の長さ」としています。しかし、最短曲線は線分でよいのでしょうか?ユークリッド幾何学に縛られすぎではないでしょうか?もし、空間が歪んでいるならば,最短曲線は線分ではないため、平行線公理が不成立な論理体系を改めて構築する必要があります。その一つが19世紀に開発された「非ユークリッド幾何学」です。この新しい幾何学のおかげで、平行線公理は「公理」であることが理解されたのです。非ユークリッド幾何学では双曲円盤の上で幾何学を行うのですが、双曲円盤とはいつまでたっても境界の円に辿り着けない「双曲距離」が入った円盤です。そのため下図(2)のように最短曲線(測地線)は曲がってしまい「測地線L上にない1点を通りLと交わらない測地線はたくさん描ける」ことがわかります。

図2

ユークリッド幾何学の平行性公理を変更するという直観とは異なるアイデアにより、我々は新しい空間認識を得ることができたのです。

「そして未来の幾何学へ」
それから100年余り、現代幾何学の進歩は目覚ましいものがあります。空間のより大域的な曲がり具合を記述する「位相幾何学」、空間や物質の対称性を記述する「リー群」、物理学の大統一理論と「接続の理論」の結びつきなど、幾何学は、空間のみならず、重力、素粒子などを記述する言葉を与えてくれます。また、近代物理学において、量子に粒子性と波動性をもたせることで量子力学が生まれ、最近は、粒子を「点」ではなく「ひも」と見なす弦理論の研究が盛んです。今度は、ユークリッド幾何学の点の定義(点とは部分をもたないものである)の変更に迫っているのかもしれません。
現代までの幾何学を振り返ると、既存の理論を越えた新しい理論の構築が繰り返し行われてきています。これまでの理論を超える斬新な空間概念・空間認識を与えることができれば、新しい世界が開けることでしょう。みなさんも,チャレンジしてみてはどうでしょうか。

「表現工学」知能ロボットの視点から

「科学技術と芸術表現を融合、横断し、それらの相互関係から生まれる新しい表現とは何かを探求し、その意味を問い、インターメディアを創造する」

表現工学科の目標として、学科Webで紹介されている一文である。ここでの「科学技術と芸術表現を融合」とは具体的にはどうすることか、実はまだわからない。構成する教員と学生がともに考え具現化していくという、新しい学科のあり方だと思っている。本学科は実に多様な教員から構成されている。音楽表現、映像表現、音響工学、人間工学、認知科学、コンピュータグラフィックス、メディアデザイン、人工生命… 各々の先生が全く異なった領域の最先端で活躍されている。これらの先生方は、本来なら全く別の学科に所属されている方が自然だろう。しかし「表現工学」というコンセプトの下に集まり協働している。まさに全く異なった技術と価値観の融合、その可能性に惹かれているのだと思う。

ところで、筆者の専門は「知能ロボット」である。一見「表現」という言葉からは大分離れたイメージがあり、実際「どうして表現工学科にロボットの“必修科目”があるのか」という質問を学生から受ける場面が少なくない。そこでこの研究領域が、どのように本学科に貢献できるものなのか少し考えてみたい。

ものづくり技術としてのロボットと表現工学
ロボットはセンサー、モーター、コンピュータからなるハードウェア/ソフトウェアシステムである。この「ロボットを構成するための技術」は、ロボット以外の“全く新しいもの”を作る技術としても転用できる。それは生活の中の便利なツールかもしれないし、見る人を楽しませるメディアかもしれない。表現工学科では「インタラクティブセンシング」という選択科目を設置している。そこで学生たちは自由な発想で入門的なロボット技術を利用し。映像や音響も含めた独自の“作品”を作っている※1 このような、新しいものづくり技術としてロボットが新しい表現工学に寄与できると期待している。

※1 例えば、http://interactivesensing2014.tumblr.com/

人間との新しいパートナーとしてのロボットと表現工学

ロボットの定義は曖昧で※2、それと関わった人がロボットだと思えば、ロボットになってしまう。ロボットという人工機械の特徴は、人間がそこに感情移入し、主体性を見出しパートナーとして認めてしまう点にある。このような人間とロボットのインタラクションの研究では、関節や手先の位置精度や画像や音声の認識率といった、定量的な基準のみでは構築したシステムを評価できない。ロボットに対する人間の姿勢に関する研究は「人間にとって他者とは?」という哲学的な話題を提供するのみならず、ロボットの形態やコミュニケーションの設計(演出)、という意味でも表現工学と深く関連すると考えている。

※2 もちろん工業規格などではその機能に基づいてきちんと定義されているが。

表現を創造する知能としてのロボットと表現工学

上記した、認知されるロボットとは逆に、認知するロボットという視点も存在する。近年話題となっているディープラーニングの技術では、パターン認識の問題に対して、従来人間が設計していたデータ特徴量(抽象表現)を用いず、大量のデータの学習によりその表現を内部に“自己組織化”することで、高い性能を発揮している。筆者らはこの技術をロボットに導入し、ロボットが自らの経験を通して、その身体や環境の独自の「表現」を作り出し、運動や感覚の連想、予測が可能となることを示した※3。このようにロボット知能の研究は、「表現の創造」という表現工学の問題と関連していると考えている。

表現工学というキーワードから、その多様性を紹介するとともに、筆者の専門であるロボット研究との関係について、考えるところを述べた。ロボットは工学である、が、同時に上記したような、定量的評価基準に収まらない多様な問題を提供する学際領域である。表現という芸術要素と科学という工学応用の融合、このような視点から、ロボットの知能という研究に対して興味を持って頂ければ幸いである。

※3 http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0921889014000396

自然の美しさと対称性 (電子物理システム学科)

自然に潜む対称性
日本には、春の到来を告げるものの一つに桜があります。桜の持つ色やその散りゆく姿は、我々日本人に感動を与え、桜が満開の中で行われる卒業式や入学式での印象は、誰もの心の中に深く残っているものです。実は、この桜には、我々科学者にとって、もう一つの美しさがあります。皆さまは、桜、特に馴れ親しんだソメイヨシノの花弁を見て何か気づかれることはないでしょうか。それは、花弁が5枚から成るということなのです。実は桜以外、道端に咲いている花を見てみても、5枚の花弁を持つ花に多く出会うことができます。当たり前のことのように思われるかも知れませんが、これが非常に興味深いことなのです。我々対称性を研究するものにとって、5枚の花弁は5回対称性という幾何学的な対称性を想起させます。ここで5回対称性について簡単に説明しますと、中心となる点を持つ図形、例えば正五角形を重心の周りに360°/5 = 72°回転しても図形が重なることをいいます。なぜかわかりませんが、自然はこの5回対称性を好むようなのです。
5回対称性と黄金比
正五角形は高校で習う数学を用いて、その不思議さを感じ取ることが出来ます。まず、正五角形の各頂点を結んで、星を作ることを考えましょう。得られる星は、皆さんも一度は書いたことがある五芒星と呼ばれるものです。当然、この五芒星も5回対称性を持ちます。次に、正五角形の頂点を結ぶ線分を対角線とし、対角線の交点を考えると、一つの対角線には二つの交点が存在します。ここで興味深い点は、一つの交点によって分けられた対角線の長さの比が、必ず1:τの黄金比になっていることです。黄金数τは、τ=((1+√5))⁄2の無理数で与えられる数学定数の一つで、τ^2-τ-1=0の解、またτ=2 cos⁡(36°)でもあります。実は、θ=36°とするとcos⁡〖(5θ)=cos⁡〖(180°)=-1〗 〗から、加法定理を用いて導くことができます。結局、五芒星は1:τの黄金比によって特徴付けられた星ということになります。ご存知の方も多いと思いますが、黄金比は、ギリシャのパルテノン神殿やミロのビーナス等の芸術作品にも見られ、人の持つ美的感性に関係しているとも言われています。また、DNAの二重らせん構造の中に、その存在を見て取ることができるという事実は、実に興味深いものです。さらに、もう一言述べさせていただくと、黄金比に加え、黄金角と呼ばれるものも存在します。(360°)⁄((1+τ) )≈137.5°で与えられる角度ですが、これも自然界においてしばしばお目にかかることができます。葉のつき方、まつぼっくりや巻貝での巻き方等に関係しているようなので、興味のある方は調べてみてはいかがでしょうか。
準結晶と5回対称性
5角形のタイルで平面を埋め尽くせないという事実は、昔からよく知られていたようです。皆さまも厚紙で5角形を作り、平面に並べてみて下さい。必ず隙間ができてしまい、埋め尽くせないことを確認することができます。このため、固体物理の分野では5回対称性、すなわち5回軸が存在しないということは、どの教科書にも書かれている常識でした。ここで5回軸とは、固体の持つ3次元的な原子配列を、ある軸の周りに72°回転しても変わらない時、この軸のことを5回軸と言います。すなわち、上述した平面の場合の3次元版です。このような状況の中、1984年にシュヒトマンらはAl-Mn合金において、現在20面体準結晶と呼ばれる状態を発見しました。この発見は、5回軸を含む回転軸の存在を示すもので、驚きを持って受け取られました。2011年のノーベル化学賞に輝きましたが、受賞までに27年を要したという事実は、学問の常識を変えた発見に対して正当な評価が得られるまでには、多くの年月が必要なことを物語っています。最近の研究から、20面体準結晶の原子配列は、複数の殻から成る巨大な原子クラスターを含むことが明らかとなっています。非常に興味深い点は、各殻が基本的に20面体対称性を持つこと、また殻の中に正20面体や正12面体が存在することです。これら二つの多面体はプラトンの正多面体と呼ばれるもので、同じ対称性を持ち、5回軸が6本も存在します。実は、正20多面体と正12多面体には60個の対称操作が存在し、正多面体の中で最も高い対称性を持っています。このため、ある意味、プラトンが正12多面体を宇宙の全体像と捉えていたことにも納得がいきます。自然の様々な所に見られる5回対称性、これからも目を離すことができません。

実体情報学博士プログラム

未来を拓く「システム・ネクスト」リーダーの育成

実態情報学

実体情報学博士プログラムは、文部科学省博士課程教育リーディングプログラムとして、平成25年度に採択 (複合領域型(情報)) されました。大学院5年間一貫の教育体制のもと、イノベーションを先導するグローバルリーダーを育成し、国内外の産業界に送り出すことを目標としています。

実体情報学とは?

「実体情報学」 (Embodiment Informatics) というのは、恐らく聞きなれない言葉かと思います。これは当然のことで、本プログラムの実施によってこの言葉が指す学問領域を確立することを目指しています。しかしながら、その趣旨は「情報技術が持つコンピューティングベネフィット (計算の効果)、通信技術が持つネットワークベネフィット (資源共有の効果),機械技術が持つボディベネフィット(実在と力の効果) の複合的価値創出を指向する中で、生産、医療、環境といった重要分野におけるアプリケーションベネフィット (問題を解くこと自体の直接的価値) を導く融合学」という点にあります。このため、6研究科12専攻が本プログラム構成上の母体となっています。

特色ある教育カリキュラムとサポート体制

機械系学部、出身の学生は情報系科目を、情報系学部出身の学生は機械系科目を履修することで幅広い工学的センスを身に付けられるようカリキュラムを構成しています。授業以外では、企業との連携や海外連携を早くから経験することで、グローバルリーダーとしての素養を養うための機会を提供します。また、機械系・情報系のさまざまな研究テーマに取り組む学生たちが、お互いが持つ方法論の強さや問題点を肌で感じながら異分野の方法論を体験的に理解し、幅広い問題解決パラダイムを体得できるようなグループワークを設定しています。さらに、本プログラムで目指すグローバルリーダー像に必要となる語学力・コミュニケーション力を養うための英語研修や、経済的に多大な不安を感じることなく学業・研究に専念することを可能とする奨励金制度などの側面からのサポートも充実しています。

工房: 学問的刺激に満ちた主体的研鑽の場

上記のような特色に加え、本プログラムならではの特徴として、人材育成を促進する場としての「工房」(写真) があります。工房は、西早稲田キャンパスから徒歩数分のラムダックスビルのワンフロアにあります。工房内を明確に仕切る壁などはなく、授業やミーティングを行うエリア。実験やモノ造りを行うエリア。自由な談話を通じて新たな発想を生み出すためのリラックスエリア。そして、専任教員・スタッフの作業エリアまでもが、見通しの良い空間に効率的に配置されています。ここでは、選ばれた講師による質の高いコロキュームを定常的に開催するとともに、その議論の延長を楽しむティータイムミーティングなども行われています。以上すなわち工房とは、指導教員の研究室からは独立した日々の研鑽の場であり、広い分野の研究者が集い刺激し合うことで新しい発想が生み出せる場です。本プログラムの参加学生は、この場を最大限に活かすことが求められます。
工房2

スタートの1年、そして、これから

2014年度は、本プログラムの実質的なスタートの年となりました。計18名の進入生を迎え、コロキューム(計8回)、イノベーション研修、海外語学研修、多種多様なワークショップ、海外講師を迎えてのシンポジウム、理工展への学生の自主参加など、試行錯誤しながらも実りある活動を行ってきました。2015年度からは、他大学リーディングプログラムとの合同ワークショップやサマースクールなどを実施し、活動の範囲をさらに広げていく予定です。実体と情報が織りなす最先端の技術領域でイノベーションを達成し、世界に飛躍しようとする意欲ある学生諸君の参加を心より期待しています。

検索窓の向こう(情報理工学科)

ハリー・ポッターの世界と我々の世界の違い
ハリー・ポッターの世界と我々の現実世界との重要な違いを挙げてほしい。
「現実世界には魔法なんてない。」
魔法使いにobliviateという忘却の魔法をかけられたマグル(魔法を使えない普通の人間) ならこう答えるかも知れないが、別の答えを考えてみてほしい。ヒントはハーマイオニーである。
勉強家のハーマイオニー。何かわからないことがあったとき、彼女がどうするか思い出して欲しい。
「ウェブ検索する。」
いやそれはない。彼女は必ず図書室に行って本を探すのである。そう、ハリー・ポッターの世界には、検索エンジンが出てこない。我々が二十世紀にそうしていたように、情報が欲しいときは図書館や図書室に出かけて調べ物をするのである。一方、我々はと言えば、もはやウェブ検索のない生活など考えられないという人が多いだろう。
ビッグ・ブラザーはあなたを見ている
別の本の話をしよう。村上春樹の「1Q84」ではなく、オーウェルが1948年頃に書いた「1984」という小説をご存知だろうか。市民の日常生活の全てが監視されている社会を描写した重苦しい話である。市民は監視されていることを知っている。街中のいたるところに
「Big Brother is watching you.」
と書かれているのだから。
「1984」の世界もハリー・ポッターの世界と同様、我々の世界、少なくとも我々の国とはかけ離れていると思うかもしれない。しかし実際には、我々の日常を事細かに観察している「ビッグ・ブラザー」が存在する。それは我々がいつも使っている検索エンジンである。
検索エンジンは、我々がいつ、どんな検索キーワードを入力し、どのホームページをクリックして何秒閲覧したかといった情報を全て記録している。スマートフォンなどで検索する場合は、検索時の位置情報を取得する場合もある。この意味で我々は常に監視下にある。
幸い、我々の「ビッグ・ブラザー」は (おそらく) 我々を支配するために監視しているわけではなく、我々の検索体験をよりよいものにするために検索行動データを活用している。例えば、どんな検索キーワードが入力されたときにどんなホームページが閲覧されるのかという情報を大量に収集しておくと、これをもとに検索結果の質を高めることができる。また、我々に適切な検索キーワードを推薦することもできる。
ユーザが欲しい情報に到達するための手助けをする技術全般を「情報検索」や「情報アクセス」という。この研究分野は情報理工学科の守備範囲に含まれる。究極の目標は、ユーザが何かを検索したいと意識するまでもなく必要十分な情報を入手できる世界を作ることである。このとき「検索」という言葉は死語となるかも知れない。
オリンピックでメダルを狙う
情報検索の研究は1950年代頃に始まったが、当時の関心事は図書館の索引をいかにうまく作って本を探しやすくするかであった。ハーマイオニーの世界である。一方、今日における情報検索・情報アクセス研究の対象は、ウェブ検索、多言語情報の検索、twitterのようなソーシャルメディアの検索、ビデオの検索、スマートフォンからの検索など、大規模化・多様化している。膨大かつ多様な情報から有用な情報だけを探し出してユーザに提供するのは簡単なことではない。しかし、例えば災害時に適切な情報が検索できれば命を救えるかも知れない。情報アクセスは非常に重要な研究分野である。
研究者が新しい情報アクセスシステムを開発し、それが世界一のものだと確信したとする。確信しているだけでは自己満足なので、ライバルと比較したい。このために、研究者達が自分のシステムを持ち寄って同じ土俵で比較評価を行う「評価型会議」という仕組みがある。同じようなことを考えている世界中の研究者が集まり「ウェブ検索」「twitter検索」といった種目別に競い合う様子は、スポーツで言えばオリンピックに似ている。協調し、競争しながらよりよいシステムの実現を目指すのは楽しいものである。
皆さんもオリンピックで金メダルを狙ってみませんか。

宇宙空間と航空機における機械材料(機械科学・航空学科)

機械と航空宇宙との関わり
「宇宙空間と機械」というと、スペースシャトルなどの宇宙機(宇宙往還機)やはやぶさなどの惑星探査機などを思い浮かべる人が多いかもしれません。もちろん、これらは宇宙で活躍する機械です。しかしながら、それだけが機械と宇宙との関わりではありません。宇宙空間は無重力であり、そのため地球上では見られない現象が起こります。それらを理解し応用していくことは「機械材料学」や「加工学」の分野では重要なことになります。また「航空機の開発要素」というと、翼の形、ジェットエンジンの仕組みなどがすぐ思いつきますが、航空機の歴史を見ると航空機に使われている材料も大きな役割を担っていることがわかります。今回は、宇宙の微小重力環境や航空機材料に関わる機械材料学、加工学の話題をいくつかご紹介したいと思います。
ISS(国際宇宙ステーション, International Space Station)での微小重力実験
若田光一宇宙飛行士が2014年3月に船長になるなど、現在ISSが話題になっており、インターネットで宇宙飛行士が宙に浮かびながら作業している姿を見ることができます。ISSの中は、重力が地上の100万分の1ほどと非常に小さい微小重力環境となっています。このような環境で、普段我々が地上で行っていることをすると、どのような現象が起こるでしょうか?雑巾を絞ったら?ろうそくの燃え方は?やかんのお湯の沸騰は?水に入れた角砂糖は?…など多くの疑問がわきあがります。これらの疑問に答えるのが力学、流体力学、熱力学を基礎とした機械科学です。すなわち、宇宙空間や微小重力環境で起きる現象は機械科学によって説明することができます。機械科学・航空学科の鈴木進補教授の研究室では、実際にISSを利用した実験を行っています。微小重力環境での実験結果を基に合金などの物質内で起こる現象のメカニズムを解明し、地上での溶解・凝固・結晶成長などの材料生産技術に応用しようとしています。
航空機に用いられている複合材料・超合金
ジュラルミン(高強度アルミニウム合金)の開発によって、機密度を高めた機体の製造が可能となり、上空10 kmを飛行するジェット旅客機が実現しました。上空の空気は0.2気圧程度で、機体の中を地上と同じ大気圧(1気圧)にしておくと、ガスボンベのように機体の外側に向かって大きな力がかかります。さらに、着陸するとこの力が取り除かれ、離着陸ごとに繰り返し力がかかったり、かからなくなったりすることが、金属疲労による機体損傷の原因となります。そのため機内の圧力を上空では0.8気圧程度(標高約2,000 mと同等)に下げる工夫をしていますが、これが機内で耳が痛くなったり、皮膚が乾燥したりする原因になっています。最近の新型旅客機は、炭素繊維で強化したプラスチックの複合材料(CFRP)で強い機体が作られているため、機内の圧力を下げなくても繰り返しかかる力に耐えられるようになり、空の旅を快適にしました。また、エンジンは燃焼室の温度が高いほど熱効率が向上しますが、それに耐える材料の開発が、実現の鍵を握っていました。最近では、超合金の発展により燃料の消費が少なく、環境にやさしいエンジンが使われています。このように材料の進化が航空機の進化に大きく貢献しています。
機械科学・航空学科が目指す教育と人材育成
このように、機械科学の一部である機械材料学や加工学の分野だけを取り上げても、宇宙空間から炭素繊維までさまざまなことが関わってきます。そのため、機械科学・航空学科では,自然科学と工学を融合した機械科学の基礎的な知識を幅広く修得し、それを積極的に活用することによって問題の発見とそれに対する解決能力を身につけることを教育の目標としています。その上で、機械科学の諸分野と航空宇宙工学に代表される総合的な理工学分野において、基礎及び応用最先端の研究や技術開発へ挑戦することによって、新たな科学的な価値の創造と技術革新に寄与できる技術者及び国際的に活躍できる真の人材を育成し、社会に貢献することを目的としています。

謎の職業X 「数学者」

数学を専門としている大学教員は,自らの職業は何かと尋ねられると「数学者」と述べます.そもそも,「数学者」って何をしているの?
― 未知の職業X,「数学者」の謎に迫る ―
数学者も実験をするの?
某ドラマの影響で,理系学者のイメージとして白衣を着て実験を行う姿を思い浮かべる人もいるかもしれませんが,数学者は白衣を着ません.実験も行いません.数学者は,実験の代わりに膨大な量の計算をしています.いきなり新しい理論を作ることは出来ないので,まずは具体的な例・極端な例などについて様々な計算・検証をします.それらを踏まえて,理論を構築し,定理を予想し,証明することを試みます.計算は,紙と鉛筆だけでも可能ですが,複雑な計算にはコンピューターの力を借りることもあります.計算データを考察することで新しい法則を発見し,理論を築いていくプロセスは工学でも数学でも同じなのです.ただ,数学では,それにプラスして「証明」が必要となります.検証の成果を真理へと変換する作業です.新しい法則を見つけたと主張するだけでは予想にすぎず,反例があるかもしれません.数理的直観力と論理的思考力をフルに活用する作業で,最も困難な部分です.
どのくらい“数学”しているの?
大学の数学教員は講義の準備や会議等で多忙です.しかし,暇さえあれば数学のことを考えています.研究に集中している時は,朝から晩まで常に考えていて,食事中もうわの空になってしまい,時には家族に怒られることも(笑).寝ている間に夢の中で研究の続きをしてしまうこともあります.睡眠中に脳が研究したことを整理しているのかもしれませんね.ここまで没頭していると,何ヶ月も考えていた問題が,ふとしたきっかけで解けることもあります.また,他の数学者との議論も重要です.議論により問題を多面的に捉えることができ,解決の糸口を掴めるのです.ある日突然“解決の神様”が降臨するわけではなく,どうしたら解けるのか毎日試行錯誤を繰り返しているからこそ,答にたどり着けるのです.その時の喜びや興奮は筆舌に尽くしがたいものです.
どんなことを研究しているの?
幾何学の場合を例にとって説明しましょう.中学・高校で学ぶ幾何学はユークリッド幾何学という紀元前の数学です.19世紀から20世紀にかけて大学で学ぶ現代数学が形づくられ,21世紀では,それらを基盤として次の世代の幾何学を生み出そうとしています.
大学で学ぶ幾何学ではn次元の曲がった空間上で微分積分をしたりします.もはや絵にかくことはできません.時空でさえ4次元ですから,“高次元化や抽象化に意味があるの?”と思うかもしれません.しかし,意味はあるのです.例えば,物理学での超弦理論は10,11次元の空間を扱います.また,経済のモデルを考えてもパラメータはたくさん必要でn次元となります.3,4次元空間だけが科学の対象ではないのです.
そして,21世紀の幾何学では,非線形・無限次元・非可換化(量子化)などがキーワードとなっています.有限次元の空間を調べるのに,無限次元の幾何学を利用します.また,空間の非可換化とは,量子力学の不確定性原理を空間に導入したものです.例えば,平面座標(x,y)において成立する式xy-yx=0を,x*y-y*x=1と変形し,平面を非可換化します.これまでの概念が通用しない摩訶不思議な現象が起こることが想像できます.未知の世界を切り拓くことが数学の面白さです.ワクワクしませんか?
数学者は暗算・暗記が苦手って本当?
苦手な人もいることは確かです.数学は,本質は何かを考える学問です.分野にもよりますが,一般論や抽象論を考えることが多く,具体的な数字よりも文字式を扱うことが多いのです.暗記が苦手な数学者も,本質が理解できてればよいので,細かい事は気にしていないのかもしれません.
受験生のみなさん!暗算や暗記が苦手だからといって,数学に不向きだと思わないでください.「謎を解きたい!」そんな強い探究心を持ったあなたこそ,数学に向いているのかもしれません.公式を暗記するのではなく,公式が意味するものを理解するように心がけてください.
どうやったら数学者になれるの?
数学者を目指すのではなく,数学の勉強が面白くて仕方がないと思うことが大事です.そして,それが研究に繋がるかどうかです.勉強と研究は異なるので,他人の力に頼らず自分の力で新しい数学を創造できる能力が必要です.大切なことは,好奇心や何事も突き詰めて理解したいと思う心です.

基幹理工学部の進化

基幹理工学部長/基幹理工学研究科長 大石 進一

理工学部が3学部に分割してから、早いもので8年目になる。基幹理工学部は機械系や電気系の学科をもとにしている学科など100年にわたる伝統がありながら、8年前の基幹理工学成立時に誕生した学科や改革で内容が変更された学科から構成され、すべて新しい学科となった。一括入試と進級振り分け制度が導入され、一年生は同じカリキュラムで一年間過ごし、その後、自分の適正を判断して学科に進級する。旧理工学部では学科別入試であったので、これは新しい試みであった。これによって学科の内容を知ってから学科を選べることや基幹理工学部の各学科に友達ができるなどの特長が得られた。これを生かして、副専攻制度が2年前より導入され、基幹理工学部内において複数の学科にまたがる学習ができるようになった。約10%の学生が副専攻に興味を持ち、実際には約6%の学生が学際的な勉強をしている。また、本年度より、情報通信学科が新設された。12年前に解体した電子通信学科や国際情報通信研究科を発展的に継承する学科で、従来、情報通信分野を担当していた情報理工学科と連携しつつも両科ともカリキュラムの専門性が増し、学生がより専門性を高めた勉強をしやすくなった。さらに、学系別入試を開始し、今年度(2014年度)生がその最初の入学者となる。進級振り分け制度は維持しながらも,進級する学科については、3つの学系の中から選ぶようになり、入学時にある程度の方向性を決めることができる。従来は95%の学生が希望の学科に入っていたが,これが100%に近くなることを期待している。

基幹理工学部は数学をベースとして、数学自身を学ぶ学科、数学や物理を基礎として工学を展開する学科や芸術・表現と工学の連携を目指す学科からなる。数学は知識の集まりという意味であり、人類の経験を言語によって普遍的に誰でも理解できる形に集められた知識である。したがって、知を追求する所には数学が普遍的に存在する。特にギリシャを起源として、仮定や公理を明確にして、論理によって定理を証明するようになり、これが現代科学の基礎を形成した。工学は数学や自然物を利用して、人に役立つ人工物を創造する営為である。航空機、コンピュータ、インターネットに代表される現代の壮大な工学的な構築物も、こんなものがあったらよいという人の夢を。科学的に実現するという営為によって作られてきた。数学も工学も科学という普遍的な原理によって誰でも理解できる形でつくられるが、なぜそのような知的営みを行うのか、夢を持つのかは人の心が決める。このような営為のもとは芸術や人の心の表現に深く関わり、基幹理工学部ではこのような分野についても表現工学科等において教育研究を行っている。

さて、大学は最高学府である。そこでは人類の知が継承され、さらに未知なるものも追求される。皆さんはその中に入り、人類の得た知識の先端まで学習することになる。わくわくとするような体験をすることができると思う。同時に、このような知の追求をする主体者として、何故夢を追うのか、それは人のためにどのような意味をもつのかなど、人としての経験や厚みを増し、次世代の社会を支える思慮深い人になって欲しいと思う。次の社会を担うのは君たちである。

「情報通信学科」は次世代のコミュニケーション技術を創出します

人間はコミュニケーションの動物だとよく言われます。いくつかの動物種には人間の言葉に近いものが存在し、コミュニケーションをしていることが分かってきつつありますが、それでも、人間のように複雑なコミュニケーションをしている動物を私たちは他に知りません。詳しいことはよく分かっていませんが、多分、数十万年前にはある種の言語が既に存在し、音声によるコミュニケーションや、文字とは呼べなくとも、絵や記号によるコミュニケーションが存在していたのでしょう。ここで、絵や記号によるコミュニケーションは、その場に人がいなくとも内容を伝えられ、その情報を保存できるという意味で画期的な発明でした。その後、人間の生活が徐々に豊かになって行動範囲が広がると、遠隔地の人々との間でより複雑で正確なコミュニケーションが求められるようになったのは必然でした。そのため、数千年前には狼煙が発明され、数百キロ離れた人々と情報交換をしていたことが分かっています。その情報伝達スピードは時速百キロ以上だったということで、情報通信技術の起源はここにあったと言えるでしょう。
時代が下って18世紀末になると、腕木通信と呼ばれる情報通信技術が発明されました。これは、腕木と呼ばれる大きな可動式の3本の木の棒を組み上げて建物の上に設置し、その棒の組み合わせの形によって文字を表現し、遠方からそれを望遠鏡などで観測して読み取るというものでした。腕木を動かす機械技術と望遠鏡を実現する光学技術を組み合わせた、新しい情報通信技術でした。最盛期には、世界中に総延長1万4千キロにも及ぶネットワークが整備され、その情報伝送スピードは時速80キロ以上だったと言われています。ちなみに、腕木通信は当時「テレグラフ」と呼ばれ、今日、私たちはこの言葉を電報あるいは電信の意味で使っています。
19世紀になると、電気を使って情報を送る電信方式が発明されました。これ以降、情報通信に使われる道具はもっぱら電気になり、有線を使った電信と電話が発明され、ヘルツ、マックスウェル、マルコーニらによって電波が発見され利用する方法が発明されると、無線通信が始まりました。電気を使った有線通信と無線通信よって、情報通信はより大量の情報をより遠方に届ける手段を獲得しました。その後、20世紀の半ばにコンピュータが発明され、それを利用して情報を伝達したり処理する技術が発明されることによって情報通信技術は一層の飛躍を遂げ、21世紀の私たちの様々な社会活動を支える世界の技術基盤として、必要不可欠なものへと変貌しました。そして、現在、人々の間のコミュニケーションばかりではなく、機械と機械の間の情報交換も情報通信技術によって行われています。今日、皆さんが、コンピュータ、スマートフォン、タブレットPC、その他の様々な情報通信機器を使い、様々なコミュニケーションを日常的に行えるのは、先達によるこのような連綿たる情報通信技術の研究と発明があったからなのです。
ところで、私たちの身の回りにある現在の情報通信機器やネットワークは究極のコミュニケーションの道具で、これ以上の進化は必要ないのでしょうか。もちろん答えはNoです。より高速に大量でリッチな情報を受け取りたい、交換したいというのは、コミュニケーションの動物である人間の本質的な欲求であり、今の技術が完全でないことはいくらでも例を挙げて説明できます。社会の持続的な発展には、より高度で使いやすい情報通信技術が、いつの時代にも求められているのです。
私たち情報通信学科が目指すのは、まさにこの点、即ち、次世代の新しい情報通信技術の実現です。現在のインターネットに代わる新しいネットワーク、より高速で大容量の通信を実現する情報通信システム、そして、よりリッチでリアルなコミュニケーションを、安心、安全、確実に実現するための種々の画期的な情報通信技術及び情報処理技術を追求しています。そして、これらの革新的な研究を通して、より豊かで幸福な社会の実現に貢献して行きます。皆さんも私たちの仲間になって、次世代の新しいコミュニケーションを実現する技術を一緒に作っていきましょう。そして、新しい情報通信技術を人類のかけがえのない遺産として次の世代に伝える役割を一緒に担っていきませんか。